ファイナンス 2021年5月号 No.666
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大麻では簡単に使用できる液状大麻の密輸が増加「大麻」では、大麻樹脂等(液状大麻等の大麻製品を含む)の密輸が増加傾向にあり、中でも液状大麻の密輸が目立つという。液状大麻は、大麻の成分のうちTHC(テトラヒドロカンナビノール)を抽出、濃縮したもので、カートリッジに入れられたもの等、簡単に使用できるものも多い。大麻については、インターネット等において、「有害性がない」等の誤った情報が氾濫しており、青少年の大麻乱用につながっていると言われている。米国では医療用の大麻が解禁されている州があり、カナダやウルグアイでは医療用以外でも大麻の使用が認められているため、海外で市販されているものが密輸されるケースも増えている。「その他」の不正薬物の増加も目立つ。その他とは、あへん、⿇薬(ヘロイン、コカイン、MDMA等)、向精神薬及び指定薬物をいう。たとえば、令和2年には、横浜税関がエクアドルから横浜港に到着した海上貨物のコンテナの中に隠されていた約722kgのコカインを摘発したが、これは過去最高の押収量となった。さらに、令和元年には、名古屋税関が愛知県豊橋の三河港に到着した船の船底に隠されていたコカイン約178kgを摘発したケースや神戸税関が神戸港に到着したコンテナの中に隠されていたコカイン約400kgを摘発した事件もあった。MDMAの摘発も目立つ。錠剤でカラフルな色や様々な模様の刻印が施されており、一見すると麻薬に見えず、麻薬使用への抵抗感が薄れている可能性がある。以前にもMDMAの密輸が横行した時期があり、平成19年には過去最高の約131万5,000錠が押収された。その後、平成22年くらいからは押収量が1,000錠に満たないほどに抑えられていたが、最近は再び増加しはじめ、令和2年においては、約9万錠の押収量となり、摘発件数は過去最高となった。これを受けて税関では警戒を強めている。平成27年以降は危険ドラッグも関税法で規制の対象に図表1の折れ線グラフは件数を示しているが、平成27年が突出して多いのがわかる。これは、平成26年ころ、指定薬物などを含む危険ドラッグの乱用者による事故の増加等が深刻な社会問題となっていたことを背景に、平成27年4月に、税関手続きなどを定めた関税法でも指定薬物が「輸入してはならない貨物」に加えられたため、摘発件数が増加したものだ。大麻の摘発事例令和2年9月、大阪税関等は、アメリカから到着した国際郵便物に隠匿された大麻リキッド約5gを摘発した。覚醒剤の摘発事例令和2年3月、東京税関は、タイから到着した海上貨物(ステーキ用石板)に隠匿された覚醒剤約113kgを摘発した。摘発事例4 ファイナンス 2021 May.

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