ファイナンス 2021年5月号 No.666
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面があり、また、ジェンダーに関するデータ整備が十分でないことからモニタリングに対する不安も挙げられた。この点についてどこまでモルディブ政府にコミットしてもらえるかが焦点となり、議論を続けることとなった。最終的に、モルディブの社会の実情、ADBの意図もそれぞれ考慮し、技術協力(TA)を通じて政府のモニタリングを支援することをコミットした上で、立案・検証フレームワークの内容について合意することが出来(以下の表を参照のこと)、5月12日にAide Memoireが取り交わされることとなった。なお、この間、理事会のスケジュールは当初の4月末から3回後ろ倒しになっており、新しい理事会の日程は6月25日に設定された。 6 ADB経営陣、理事会への説明、そして承認へ(5月後半-7月)ADBとモルディブ政府との間でFact-Finding MissionのAide Memoireが取り交わされ、CPROの支援内容、立案・検証フレームワーク(DMF)、技術協力(TA)の内容が両者の間で合意されたことを踏まえ、5月27日に理事会メンバーに向けた非公式なブリーフィング(IBS:Informal Board Seminar)が、5月28日にADB経営陣による案件審議(MRM:Management Review Meeting)がそれぞれセットされた。IBSでは、ADBの支援がそれを必要とする社会的弱者に適切に届くようモルディブに対するCPROがデザインされているか、観光・旅行業の再開の見通しはどうなのか、モルディブに対する支援でADBの付加できるバリューは何か、といった幅広い観点から理事会メンバーのフィードバックが寄せられた。また、モルディブ政府の中長期的な債務持続性について、ADBとして提供できる価値についてしっかりと検討を続けていくよう提案があった。MRMでは、チェン副総裁と各部局の幹部からCPROの支援内容と稟議書に対してフィードバックが与えられ、最後に副総裁よりCPROの内容に対する承認が与えられるとともに、プロジェクトチームがモルディブ政府との融資契約書交渉に臨むことが認められた。交渉日は6月1日に設定された。6月1日に融資契約書交渉がADBとモルディブ財務省との間でオンラインで行われた。交渉時点でADB表2:最終的に合意された立案・検証フレームワーク(Design and Monitoring Framework)(改革分野(Reform Area)のみ抜粋)達成目標指標ベースライン1. COVID-19に対する保健医療対策パッケージ1.1 2020年8月までに、地域をまたいだ5つの地域病院にCOVID-19の検査施設を設置する。2020年5月時点:中央ゾーンに2施設1.2 2020年8月までに、200の救命救急病床をCOVID-19の治療用に確保する。2020年5月時点:351.3 2020年8月までに、少なくとも400の隔離病床を医療施設に確保する。病床は男女で病棟を分けること。2020年5月時点:178(マレ首都圏)1.4 2020年8月までに検査キャパシティを1日当たり800件に増やす。2020年5月時点:1日当たり400件2.社会的保護パッケージ2.1 2020年8月までに、4,000の貧しく弱い立場の世帯に対して現金支給を3カ月間行う。その対象には、少なくとも1,500の独身、未亡人、離婚、もしくは障害を持つ女性が家長である世帯を含むこと。2020年3月時点:該当せず2.2 2020年12月までに、少なくとも15,000人の移民労働者をマレ首都圏の受け入れ施設に移すこと。女性に対しては別の区画を割り当てること。2020年4月時点:700人の移民労働者がGulhifalhu島の施設に移された。2.3 2020年6月までに、少なくとも45,000の世帯が電気代に対する40%の補助と水道代に対する30%の補助を2ヶ月間受ける。2020年3月時点:02.4 2020年8月までに、COVID-19 Income Support Allowance Programについて、100%の受給資格のある申請者が、必要な情報の揃った申請書の提出から3週間以内に給与補償手当を全額を支給される(弱い立場にある女性や障害を持つ申請者に対しては、必要な情報の揃った申請書の提出から2週間以内に支給する)。2020年3月時点:該当せず2.5 2020年8月までに、マレと島嶼部にあるfamily and child service centersの中にあるジェンダーに基づく暴力の被害者のための宿泊設備を少なくとも5ヶ所修繕して稼働させる(100人を収容できるようにすること)。2020年4月時点:1ヶ所が稼働2.6 2020年12月までに、すべてのCOVID-19の感染者(モルディブ人と外国人を含む)に対して、外来診察と入院治療を含めて医療保険スキーム(Aasandha)のカバーの対象とする。2020年3月時点:03.経済対策パッケージ3.1 2020年8月までに、COVID-19 Viyafaari Ehee Loan Scheme(2019年の売上高が1,000万ルフィアより少ない中小企業と自営業者を対象とする運転資本に対する融資スキーム)について、100%の受給資格のある申請が、必要な情報の揃った申請書の提出から3週間以内に融資を受け取ることができるようにすること。 また、申請の全体のうち18%は女性が経営する事業からの申請であること。女性の申請の場合は2週間以内に融資を受け取ることができるようにすること。2020年3月時点:該当せず3.2 2020年8月までに、COVID-19 Recovery Scheme(2019年の売上高が1,000万ルフィアより多い企業とリゾート業者を対象とする運転資本に対する融資スキーム)について、少なくとも90%の受給資格のある申請が、必要な情報の揃った申請書の提出から3週間以内に融資を受け取ることができるようにすること。 また、申請の全体のうち10%は女性が経営する事業からの申請であること。2020年3月時点:該当せず(出所)アジア開発銀行公表資料を基に筆者作成 ファイナンス 2021 May.53海外ウォッチャーFOREIGN WATCHER連載海外 ウォッチャー

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