ファイナンス 2021年5月号 No.666
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心であればよりリレバンを推進しやすいと思います。地銀の預貸率は非常に低い水準です。金利の低い預金で預かるよりも、少しでも配当のつく出資に振り替えて貰うことも選択肢になるでしょう。地銀の活動が、地元からどんどん遊離しているから株主候補がいないのであって、地域との関係を再構築すれば株主候補は出てくるのではないでしょうか。―東京には多数の金融機関があります。東京特有の課題はありますでしょうか。新田 多くの方が誤解されていますが、東京は実は未だに地元のつながりが強い地域です。お祭りや年末年始のイベント等もたくさんあります。もちろん町会費を払わない人が増える等の課題はありますが、リレバンを広めるうえでの基盤となる「地元」がないわけではありません。―従来から中小企業を中心に現預金・内部留保の増加傾向が指摘されてきましたが、コロナ禍で、借入が増加する一方で、現預金残高も増加しています。地域金融として課題は無いでしょうか。また、政府はいわゆるゼロゼロ融資、信用保証制度拡充等の経済対策で資金繰り支援していますが、こうした施策をどのように評価されますか。新田 顧客の皆様の中で、「コロナで先が見通せない」「預金を増やしたい」「借りられるなら借りる」という動きがあったのは事実です。個人的意見ですが、ゼロゼロ融資はすべきではなかったと思っています。未曾有の危機の中で、低金利融資・信用補完は必要でしたが、金融機関にわずかでもよいので信用リスクを負担させるべきでしたし、債務者にはわずかでもよいので金利を負担してもらうべきだったと思います。ゼロゼロ融資により、結果として本来必要のない資金を借りている例があり、資金に余裕がある人は運用資金に回しています。コスト負担の意識がなく、資金使途の検証がされず、融資規律が壊れました。特にコロナ下であれば、融資の多くは赤字補填になるため、通常であれば返済計画を丁寧に審査する必要がありますが、今回は行われない例がほとんどでした。さらに、金融機関は本来貸し出し後の対応が大事であり、特に赤字資金の回収であれば尚更なのですが、今回は信用リスクの負担がないため、元々リレバンに力を入れていたところを除き、貸した後のフォローアップも不十分です。融資規律の崩壊は中長期的にも大きな悪影響が生じるでしょう。政府系金融機関は今後も間違いなく必要です。この際、民間ができない部分の補完に徹することが大事です。政府系がメガバンクや地銀と競うようなことをやっていてはいけません。政府系との協業については、商工中金は地域金融機関と協調・相互補完しながら、地域経済の活性化を図る事が目的で、当組合は商工中金の代理店でもあり、そういう意味でいま提携をしています。日本政策金融公庫についても、東日本で初の創業支援で連携を行いました。政府系との協業においては、量的補完のほかに、ノウハウや情報面での連携が重要です。例えば、当組合は従業員数が400人であり、調査部門の規模は決して大きくありません。政府系の調査部門の情報は大変貴重なものとなります。政府系金融に限らず、政府による支援はより民間の自助努力を促すものであるべきです。日本の産業は政府による支援に依存しすぎであり、国際競争力の低下につながっているように思います。―本日はお忙しい中、地域金融機関の現状や課題等、多岐にわたる貴重なお話を伺いました。誠に有難うございました。(この勉強会は、2月18日に行われました。参加メンバーは川本・林原・足立・大槻・神代です。) ファイナンス 2021 May.19財務省再生プロジェクト 部局横断的勉強会(3) SPOT

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