ファイナンス 2021年5月号 No.666
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(イ) バックキャスティング思考を活用したワークショップ開催先述の宮城県涌谷町と同様に令和2年2月に「財政非常事態宣言」を発令した宮城県村田町に対して、“バックキャスティング”思考を活用したワークショップを開催いたしました。“バックキャスティング”とは、東北財務局が主催した「YouTubeライブシンポジウム」で早稲田大学名誉教授の北川正恭氏が取り上げた、「将来のありたい姿から、現在のなすべき取組を決めていく思考方法」のことです。課題解決のフレームワークとして、トヨタ自動車(株)といった民間企業はもちろん、団体においても活用が進んでいます。今回の研修会の開催にあたり、町側からは、「職員の意識を変えたい。研修会を通じて、今後の町の財政を職員自らの頭で考えるきっかけとなってほしい」とのオーダーがありました。バックキャスティングの対義語であるフォアキャスティングとは「現状で実現可能と考えられることを積み上げて、未来の目標に近づけようとする方法」であり、起点は現在です。このフォアキャスティング思考、つまり、今の延長線上から脱却するための転換点にするためにも、研修会に参加した町の今後を担う中堅職員の方々の頭に今後もしっかりと残るキーワードが必要と考えました。そこで、“バックキャスティング”思考を紹介し、「20年後の町の未来」を見据えてのワークショップに取り組んでいただくことにしました。最初に「まちの家計簿シミュレーション」で財政の現状を把握してもらい、その後に、これまでの町の歩みを振り返ってもらうワークを取り入れ、過去へのメッセージを考えていただきました。【参考】研修会資料(2)●●はやらないほうがいいと思う!●●はやったほうがいいと思う!第一部町の家計簿シミュレーション現在村田太郎(40歳・チーフ)町民の幸せのために…第二部過去(2000年)へのメッセージ村田太郎(40歳・チーフ)役場に入ったばかりのおれ、何をやってたっけ…?現在「●●をやっておけばよかったのに!」「〇〇をやっていてよかった。ありがとう!」「☆☆をやらなくてよかった。ありがとう!」その後、今回のメインテーマである“バックキャスティング”の考え方を体感してもらうために、イメージする理想の将来(2040年)にタイムスリップしてもらい、未来から現在に対するメッセージを出してもらうという方法でグループワークを展開していきました。【参考】研修会資料(3)、研修会の模様(宮城県村田町)第三部タイムスリップ(2020年→2045年)2045年はどんな村田町になってる??直前のワークで、過去の自分たちへの“反省”を経験していたため、「二の轍は踏まないぞ」といった意識が働いたのか、具体かつ大胆な意見が数多く出され、想定以上の盛り上がりが見られました。村田町に限らず、行政の職員は日々様々な利害の調整に頭を悩ませているわけですが、未来起点の“価値前提”で議論をすることで、今までイメージしていた未来とは違った未来を思い描くことができたようです。参加者からは、「目先(現在)のことではなく、その先(未来)のことも考えて行動することが大切と認識した」、「町の財政について改めて考えさせられた。今後、どうしていくのか職員同士で意見を交わすことは大切。様々な意見が聞けて参考になった」といった感想が寄せられました。町の小林財政課長からは「研修会により、職員の財政に対する危機感が共有されたおかげで、その後の新年度予算編成過程においては、各セクションでいかに経常経費を減らすかなど、コスト意識の醸成や改革意識が芽生え、財政健全化へ向けた大きな一歩が踏み出されました。今では、その効果を財政担当課として強く実感しています」とのお言葉をいただきました。【参考】研修会資料(1)~FUTUREDESIGN~財務省東北財務局R2.11.26村田町財政研修会バックキャスティングで村田の未来を考える14 ファイナンス 2021 May.SPOT

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