ファイナンス 2021年5月号 No.666
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か、町役場の財政担当課の方々とともに検討を重ねていきました。検討の過程で町側から、「平成27年度の財務局の財務分析結果では、当町がこのような状況になることを予見していた。財務局の分析ノウハウを提供してもらえないか」との相談を受けました。そこで、改めて財務分析を行うこととし、さらには分析結果を題材とした財政研修会も実施することとなりました。また、「職員が宣言を自分ごととして受け止めてくれるようにしたい」、「財政再建に一丸となって取組んでいくために、議員と職員が交流する機会にしたい」との話があり、財務分析のシミュレーションを使用したグループワークを議員、職員間で行うこととなりました。こうして生まれたものが「まちの家計簿シミュレーション」です。【参考】シミュレーション画面抜粋政策を選択(チェック)することで、4つの指標の推移が変動。歳出歳入項目増減政策(お金の使い道)金額 出産手当1億円 医療費無料 (高校生まで)2億円 子供の遊び場整備5億円3億円子育て項目金額増減方法地方税増加増税/徴税率UP 等012345678910H26H27H28H29H30預貯金は給与の何倍あるの?(積立金等月収倍率)涌谷町全国平均類似団体平均シミュレーション結果(月)緑ゾーン:問題なし黄ゾーン:やや注意赤ゾーン:注意当町変動!P4【参考】シミュレーション画面抜粋政策を選択(チェック)することで、4つの指標の推移が変動。歳出歳入項目増減政策(お金の使い道)金額 出産手当1億円 医療費無料 (高校生まで)2億円 子供の遊び場整備5億円3億円子育て項目金額増減方法地方税増加増税/徴税率UP 等012345678910H26H27H28H29H30預貯金は給与の何倍あるの?(積立金等月収倍率)涌谷町全国平均類似団体平均シミュレーション結果(月)緑ゾーン:問題なし黄ゾーン:やや注意赤ゾーン:注意当町変動!P4【参考】シミュレーション画面抜粋財務分析の結果をもとに、財政になじみが薄い事業担当課の職員でも理解しやすいように、市町村の財政を「家計簿」に見立てて、全国の類似団体との比較要素を取り入れたシミュレーションを開発しました。シミュレーションは、実際に町が現状実施している政策や、全国の団体の政策を並べ、各政策の実施の有無により、財政状況の変動がタブレットで自動計算され、視覚的に理解できる仕様となっています。当初は、全国の団体に広まっているまちづくり対話型シミュレーション「SIM2030」を実施するという案もありましたが、自らのまちの財政状況をストレートに知ってもらうために、財務局の分析手法を活用したシミュレーションを新たに開発しました。事業担当課の職員が、財政課の予算編成作業を体感できるプログラムとなっており、予算を要求する側から、予算をバランスさせる側に立つ疑似体験はシミュレーションならではの醍醐味です。グループワークの様子をのぞいてみると、「●●の事業は削減しよう」といった議員や他課の職員の意見に対し、その事業を担当している課にいる職員が、事業が必要な理由を丁寧に説明している姿が印象的でした。(中には、自分たちがこれまで予算要求していた事業を自ら削減する選択をしていた場面も見られました)【参考】研修会の模様(宮城県涌谷町)参加した議員、職員からは「タブレットの活用により、施策の実施有無で財政状況の変化が“見える化”され、中身のある議論ができた」、「当町の財務指標が、県内、類似団体それぞれのカテゴリでどのような立ち位置にあるのか確認できた」、「職員と議員が一堂に会して意見を出し合うことは有意義。今後も継続したい」といった感想をいただきました。涌谷町長からは「財務局の分析指標はとてもわかりやすい。公営企業である病院と下水道は厳しい状況にあり、関係者の経営感覚・危機意識を高める必要があった。今回の研修の参加者も町の財務状況や財政再建に向けた課題について実感してくれただろう」との感謝の言葉をいただきました。【参考】宮城県涌谷町の遠藤町長(研修会時の写真)なお、財政研修会の開催をきっかけとして、その後に町が開催している「町財政及び病院事業に係る有識者会議」の常任委員に東北財務局の融資課長が就任しており、財務分析した町財政の状況について、第三者の立ち位置から客観的なアドバイスを行っています。財務分析において「財政上の留意点」として財務局から問題提起していた「公営病院事業の経営改善」に向けた取組が着実に進んでいます。 ファイナンス 2021 May.13持続可能な地域社会実現へのサポート SPOT

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