ファイナンス 2021年5月号 No.666
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援も強化しています。「傘」部分の主体は団体であるため、財務局でできることは間接的な支援とはなりますが、他団体の収支改善の事例の紹介(横展開)や、分析団体の首長や職員、議会議員を対象とした「財政研修会」の開催を通じて、様々な情報を提供するといった取組を行っています。3東北財務局の取組そうした中で、東北財務局ではいくつかの趣向を凝らした取組を実施していますので、紹介いたします。(1) 東北管内“全”団体に対して財務分析結果を提供財務局が実施している財務分析は、オフサイトでのデータ解析に始まりますが、分析結果を提示する際には、算出した財務指標の分析結果だけではなく、オンサイトでのヒアリングを基にして分析結果を深堀りしているほか、類似団体との比較や、全国の他団体の収支改善の事例の提供などにも努めています。しかしながら、財務分析を担う財務局の職員は、各県に数名の職員しか配置されていません。しかも、年間の業務時間のうちおよそ半分は財政融資資金の貸付業務を行っていることから、財務分析を実施可能な団体数はどうしても限られてしまいます。また、財務分析を実施した団体に対する後年度のフォローが十分にはできていないというのが実態でした。つまり、有効な分析手法を持っているにもかかわらず、マンパワーの問題もあって、限られた団体にしかコンサルティング機能を発揮できないというジレンマがあり、さらには、コンサルティングに対する潜在的なニーズの把握も十分にできていないというのが課題でした。そこで東北財務局では、令和2年度からの新たな取組として、東北管内の全団体の財務状況について、“簡易的”に分析した結果を提供する取組を始めました。「マンパワーが不足しているというのに、全団体への財務分析ができるのか」という疑問が出てくると思われますが、そもそも財務局では毎年度、全団体が作成を義務付けられている「地方財政状況調査表」(通称、「決算統計」)の計数を用いて、統一的な算定方法で全団体の財務指標を算出しています。ヒアリングによってしか得られない“詳細版”の分析結果をヒアリング先の団体に提供するという従来のやり方も行いつつも、統一的な算定手法であるメリットを活かし、簡易的に分析した客観性や比較可能性の高い算出結果を“簡易版”の分析結果として全団体に提供することとしたものです。【参考】資料提供時の同封文書財務省東北財務局理財部融資課財務状況把握を活用した貴団体の財政分析結果について◆財務局においては、財政融資資金の償還確実性を確認する観点から、地方自治体の財務状況把握(債務償還能力と資金繰り状況)を実施しており、一定の選定基準のもと、一部団体には、財務状況ヒアリングを実施し、結果概要(診断表)を交付しているところです。◆こうした財務状況把握のツールを地方自治体のニーズに応じて、広く活用していただき、財政運営等にお役立ていただきたいと考え、今般、貴団体の財政状況(H30年度)について分析した参考資料を作成いたしました。◆今回の分析結果は、決算統計に基づく形式的な分析になります(ヒアリング団体に対しては詳細分析を実施)が、ご不明な点がございましたら、東北財務局融資課までお問合せください。東北財務局その結果、団体からのニーズの掘り起こしに成功し、ヒアリングを実施していない団体を含め、財政研修会の開催が東北各地で広がっています。また、この簡易版の財務分析結果の提供の取組は、今後も継続的に実施することとしており、ヒアリング実施団体に対する後年度の「継続フォロー」にもつながっていくと考えられます。(2)財政研修会の実施(ア)まちの家計簿シミュレーション団体では、事業担当課は予算の「獲得」の意識がどうしても働いてしまい、財政課以外の職員には財政の課題・問題認識が十分浸透していない場合があります。宮城県涌谷町では、人口減少等による自主財源の減少や高齢化等に伴う扶助費の増加等により財政状況が悪化し、平成31年1月に「財政非常事態宣言」を発出しました。しかしながら、役場内部での宣言に対する反応は様々だったようで、町が一丸となって財政の再建に取組んでいくために、財務局で支援できる方策はない12 ファイナンス 2021 May.SPOT

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