ファイナンス 2021年5月号 No.666
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船と船の洋上取引で覚醒剤約1トンの押収例も不正薬物が日本に持ち込まれる方法には、大きく分けて(1)航空機の旅客が持ち込むもの、(2)国際宅急便など航空貨物として持ち込まれるもの、(3)大型のコンテナで海上貨物として持ち込まれるもの、(4)国際郵便物として送られるもの、(5)船員が持ち込むものがある。過去5年間の摘発状況を密輸形態別に見ると、摘発件数では航空機旅客が突出している。令和2年はコロナ禍で海外との人の往来が規制されたため、摘発件数が大幅に減少したが、令和元年は229件に達していた。海外から入国する旅客がスーツケース等の携帯品に隠して覚醒剤を持ち込むケースが多かった。コロナが収束し入国規制が緩和されれば、海外との人の往来が再び増加して旅客による密輸が増える可能性があるため、今後の対応強化が求められる。一方で押収量が多いのは、海上貨物だ。とくに令和2年は海上貨物による押収量が突出して多く、約639kgに達した。また、同様に押収量が多いのは、船員等であり、これには、洋上取引による密輸が含まれる。これは、船と船が洋上で受け渡しをする方法で「瀬取り」とも言われるが、令和元年には、東京税関等が、鳥島南西方沖において洋上取引された覚醒剤約1トンを静岡県賀茂郡南伊⾖町の海岸において摘発、過去最高の押収量となった。また、同年12月にも、門司税関等が、東シナ海において洋上取引された覚醒剤約587kgを熊本県天草市⿂貫町の港において摘発し過去3番目の押収量となった。航空貨物の摘発事例令和元年5⽉、⼤阪税関は、アメリカから到着した国際宅配貨物(⾃動⾞⽤マフラー)に隠匿された覚醒剤約1.6kgを摘発した。航空機旅客の摘発事例令和元年10月、沖縄地区税関は、マレーシアから那覇空港に到着したポーランド人旅客の携帯品(サンダル)に隠匿された覚醒剤約0.9kgを摘発した。摘発事例覚醒剤の密輸形態別の摘発件数・押収量の状況摘発件数は航空機旅客の持ち込みが突出海上貨物・洋上取引の大口摘発により押収量が増加6 ファイナンス 2021 May.

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