ファイナンス 2021年4月号 No.665
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香港の統制強化、台湾への圧力に対して厳しい姿勢で臨む方針を示した。また第一段階合意の履行状況を点検し、合意自体の見直しを含め検討するとの考えも表明している。2月10日に電話で行われた米中首脳会談において、バイデン大統領は中国の習近平国家主席に対し、中国による香港の民主派弾圧や新疆ウイグル自治区での人権侵害、威圧的で不公正な経済慣行に「根源的な懸念」を抱いていると伝えたとホワイトハウスが報じている。さらにUSTR(米通商代表部)代表に指名されたキャサリン・タイ氏も2月25日、中国の知的財産権侵害や不公正や貿易慣行を問題視したうえで、トランプ政権の発動した対中追加関税は、「合法的な手段」であるとし、第一段階合意について「中国は実行に移すべきだ」との見解を示している。4.終わりにこれまで足元の米中貿易の概要について解説するととともに、貿易摩擦のさなか第一段階合意に至った経緯、合意の履行状況、またバイデン政権の対中方針について考察してきた。米中貿易の今後の動向は、日本経済のみならず世界経済の命運を左右しうる重要なトピックであり、「新たな冷戦」とも比喩される両国の関係から目が離せない。米中貿易の動向を引き続き緊張感を持って注目してまいりたい。(注)文中、意見に係る部分は全て筆者の私見である。(出典・参考文献等)*2*2) (出典・参考文献等)米商務省センサス局、内閣府・世界経済の潮流2018-II、2019-II、ジェトロ、各種報道、レポート○中国政府は米・小麦・トウモロコシの3大穀物は基本的に自給する方針であり、大豆は収益性がトウモロコシ等より劣ることから輸入に頼っている。また、国内の食用油需要の増大により、油の成分が多い遺伝子組み換え大豆の輸入が急増している。なお、大豆の中国国内消費量のうち食用約15%、搾油用約85%。搾油後の搾り粕は豚などの飼料原料となる。コラム 中国の大豆輸入78 ファイナンス 2021 Apr.コラム 海外経済の潮流 133連載海外経済の 潮流

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