ファイナンス 2021年4月号 No.665
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コラム 海外経済の潮流133大臣官房総合政策課 海外経済調査係 野上 優米国と中国の貿易動向についてIMFの統計によると、2018年の世界の総貿易額38.8兆ドルのうち、世界の貿易相手国の順位を見ると、第1位は中国4.5兆ドル(シェア11.6%)、第2位が米国4.1兆ドル(同10.6%)となっている*1。世界の総貿易額の約1/5を占める超大国である両国の動向は世界経済に大きな影響力を与えることがわかる。2016年11月の米国大統領選で、事前の予想に反しドナルド・トランプ氏が勝利、ここから米中関係は大きな変動の時を迎える。そこで本稿では、米国貿易統計からみた足元の米中貿易の概要について解説するととともに、米中貿易摩擦から第一段階合意に至った経緯、合意の履行状況、またバイデン政権の対中方針について考察することとしたい。1.米中貿易の概要2020年の米国の輸出入相手国をみると、中国は、輸出ではカナダ、メキシコに次ぐ第3位、輸入では第1位となっている。米中は両国とも重要な貿易相手であり、お互いに無視できない存在となっている【図表1】。次に米国から中国への主な輸出品をみると、大豆、*1) IMF direction of trade statisticsICチップ、原油、自動車、機械部品、航空機・エンジンなどが挙げられる。大豆の輸出額は、2020年11.4%と1位になっているが、これは、米中合意を受けた大豆の輸出増を受けたものであり、2019年は第3位である。一方、米国の中国からの主な輸入品は情報処理機器、電気機器、繊維製品、玩具・遊戯用具、テレビ類などが挙げられる。2020年の対中貿易では、輸入額〔4,354億ドル〕が輸出額〔1,246億ドル〕を上回っており、米国の対中貿易は▲3,108億ドルと大幅な貿易赤字となっている【図表2】。中国の貿易赤字は、1987年時点では、対GDP比で0.1%であったが、その後急速に赤字額が拡大し、2017年時点では対GDPが1.9%と米国の貿易赤字の対GDP比4.1%の半分を占めている。米国はこの対中貿易の膨大な赤字額の増加を問題視していた【図表3】。2. 米中貿易摩擦・第一合意(経緯と第一合意、合意の履行状況)2017年1月に誕生したトランプ政権は対中貿易赤字の縮小を目指し、2018年7月以降、第1弾から第4弾にわたり段階的に中国からの輸入品に対し追加関税【図表1】米国の輸出入相手国〔2020年〕カナダ17.8%メキシコ14.9%中国8.7%日本 4.5%英国 4.1%ドイツ 4.0%その他46.0%<米国の輸出相手国>2020年合計14,314億ドル中国18.6%メキシコ13.9%カナダ11.6%日本 5.1%ドイツ 4.9%ベトナム3.4%その他42.4%<米国の輸入相手国>2020年合計23,366億ドル(出所)米商務省76 ファイナンス 2021 Apr.連載海外経済の 潮流

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