ファイナンス 2021年4月号 No.665
78/94

コラム 経済トレンド82大臣官房総合政策課 調査員 石神 哲人/田村 怜原油価格変動と経済波及本稿では、原油価格の変動と経済への波及について考察する。主な原油関連指標と近時の変動・原油価格は、市場経済における需給に応じた変動に加え、金融の動向、地政学リスク等により上下する性質を持つ。現在は国際的な指標として、主な産出国の違いに応じて英国のブレント先物、米国のWTI先物、ドバイ先物などが参照される(図表1)。・原油は資源の中でも価格変動が大きく、とりわけ新型コロナウイルス感染拡大の際は他の資源以上の価格低下となり、WTI先物価格が一時マイナスとなった(図表2)。図表1 主要原油先物価格の推移01601401201008060402090950005101520(年)(ドル/バレル)WTIドバイ原油北海ブレント図表2 コロナ下における資源価格水準の推移▲100200150100500▲502020/12020/22020/32020/42020/52020/62020/72020/82020/92020/102020/112020/122021/12021/2(2019年末=100)WTI石炭天然ガス金原油産出の状況・2019年時点で、1日当たりの原油生産量が多い国は米国となっており、次いでサウジアラビア、ロシアと続く。近年はOPEC非加盟国の生産量が増加し、価格決定への影響力が増大している(図表3、4)。・サウジアラビア等のOPEC加盟国は、市況を勘案し協調して産出量を増減することで、原油全体の価格安定化を図っているが、しばしば価格競争が行われ、2020年に原油先物価格が一時マイナスとなった要因の一つとして、シェア争奪を背景とした減産協議の不調が挙げられている。また、産出国ごとに経常収支や財政収支が均衡する価格は異なっており、価格変動は原油に依存した国の経済運営に大きな影響を与える(図表5)。図表3 国別原油生産量(2019年)順位国名一日当たり 生産量(バレル)OPEC加盟国1アメリカ合衆国17,044,6022サウジアラビア11,832,319★3ロシア11,539,5734カナダ5,650,7735イラク4,779,476★6アラブ首長国連邦3,997,689★7中華人民共和国3,835,9808イラン3,534,572★9クウェート2,995,620★10ブラジル2,876,530図表4 OPEC加盟/非加盟別原油生産量19651968197119741977198019831986198919921995199820012004200720102013201620190120601005080406030402020100(百万バレル/日)(%)OPEC非OPEC OPEC生産比率図表5 主要産出国の収支均衡価格(ドル/バレル当たり)原油輸出国経常収支についての均衡価格 (External Breakeven Oil Price)2016年2020年アルジェリア89.1100.5バーレーン64.681.1イラン28.387.7イラク45.959.4クウェート46.050.4リビア74.258.8オマーン75.072.2カタール48.350.4サウジアラビア48.855.3UAE31.532.474 ファイナンス 2021 Apr.連載経済 トレンド

元のページ  ../index.html#78

このブックを見る