ファイナンス 2021年4月号 No.665
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令和6年度に刷新される1万円札の顏、渋沢栄一は今年のNHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公だ。大蔵省(現財務省)退官後、本邦初の銀行や証券取引所を立ち上げ、民間経済人として約500社もの創業や育成に関わった。後世わが国資本主義の父と称される偉人の足跡が日本橋界隈に多く残っている。水路網の拠点だった日本橋日本橋といえば江戸時代の五街道、近代以降の主要国道の起点である。そして舟運の拠点だった。ほとんど埋め立てられてしまったが、以前は市街の縦横に水路が張り巡らされていた。中でも日本橋界隈は密度が高かった。水路の河岸は物資の荷上場となり、魚河岸、米河岸、塩河岸など取扱商品によって名前が付けられた。河岸の背後には問屋街ができ、魚河岸を擁した本船町近辺が特に栄えた。日本橋とそのひとつ下流の江戸橋の間の日本橋川の北面に魚河岸があった。江戸の城下町には屋敷の所有者と地価が記載された「沽券図」があった。沽券とは不動産の権利証のようなもので、地所の値打ちが転じて「沽券にかかわる」の語源になった。これを元に明治の地租改正を経て地券を発行し課税するための沽券地図が作られた。明治6年(1873)に東京府地券課が作成した沽券地図を見ると坪数、評価額、所有者名が屋敷の区画毎に記載されている。それで最も高かった屋敷地が本船町にあった。当時の一等地は日本橋魚河岸の後ろ側、言い換えれば三越前の中央通りを東に入った場所だった。銀行発祥の地近代の経済インフラは関東大震災で架け替える前の江戸橋近くに集まっている。当時は日本橋川の他に伊勢町堀、東堀留川そして楓川が流れており、ちょうど図1 市街図 (出所)筆者作成親柱70 ファイナンス 2021 Apr.540C560C610C620C400D400D400D570C630C660C650C550C610C600C420D420D400D400D400D410D410D410D420D440D390D390D390D320D320D370D340D970C275D290D270D870C850C870C900C870C360D360D500D730C510C510C810C490D1,090C1,200C1,410C1,380C1,520C1,620C1,650C1,560C1,570C1,510C1,720C2,100C2,240C2,210C2,160C2,350C2,390C1,900C1,500C1,430C1,130C1,150C1,500C1,550C2,600C2,550C2,430C2,310C1,730C1,080C255E295E240E320D275D470D470D540C路線価でひもとく街の歴史第14回 「東京都中央区」水辺の街、銀行発祥の地と日本橋連載路線価でひもとく街の歴史

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