ファイナンス 2021年4月号 No.665
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(3)ミクロでの期待マクロ経済指標の観点からインドネシアの将来性について評価してみましたが、次は企業の視点から見て行きたいと思います。日系製造業企業がどの途上国を有望視しているかを測る指標として、JBICが毎年アンケート調査をおこなっています。これによると、13、14年ごろは首位を位置していたインドネシアですが、その後は順位を下げ続けています。背景には、労働コストの上昇や法制運用の不透明さなどが挙げられており、引き続き将来性に期待はするものの、当地マーケットの成長期待は一時よりは下降した、というのが大方の見方のようです。中長期的な有望国・地域の推移41.8 44.9 45.7 38.8 35.8 33.1 30.4 25.2 27.0 2020201920182017201620152014201320120.070.060.050.040.030.020.010.0得票率(%)(年)(JBIC資料より大使館作成)中国インドインドネシアベトナムタイ米国(4)まとめ本章では、インドネシアの可能性そのものについて考えてみました。当たり前ですが、永遠に可能性を持ち続けることのできる国は存在せず、それを実現しなければ国は衰退していくほかありません。こうした点を鑑みても、今後10年のインドネシアは、非常に重要な舵取りを必要とする時期に差し掛かっているといえますし、そのためにも一刻も早い経済回復が望まれます。 5 おわりに以上が、私がインドネシアに駐在する間に感じたことです。インドネシアの成長は日本にはない勢いを感じるものの、その可能性の割りには経済が成長していないこと、またその可能性の賞味期限はもはや悠久とは言えない時期にさしかかっていること、についてなるべく客観性をもってお伝えしたつもりです。他方で、当地で仕事をしたことのある方ならば経験されたことも多いと思いますが、締切直前を迎えたインドネシア人の爆発力は日本人にはないものがあります。こうした爆発力も踏まえ、インドネシアは今なお、可能性の大国と呼ぶにふさわしいのではないかと考えている次第です。なお、本稿は3月中旬に執筆しており、各種の情報もその時点のものであることをご了承下されば幸いです。また、本稿は筆者の個人的な見解であり、日本政府及び在インドネシア日本国大使館としての見解ではないことを付言させて頂きます。それでは、Sampai jumpa lagi。 ファイナンス 2021 Apr.61海外ウォッチャーFOREIGN WATCHER連載海外 ウォッチャー

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