ファイナンス 2021年4月号 No.665
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新規感染者数の推移(全国・ジャカルタ)2,0004,0006,0008,00010,00012,00014,0005‒Feb5‒Jan5‒Dec5‒Nov5‒Oct5‒Sep5‒Aug5‒Jul5‒Jun016,000(人)新規感染者数・全国(実測値)新規感染者数・全国(移動平均7日間)新規感染者数・DKI(実測値)新規感染者数・DKI(移動平均値7日間)(インドネシア保健省より大使館作成)(2)経済対策についてこうした感染拡大に伴う経済活動の抑制に対して、インドネシア政府は財政・金融両面から様々な対策を取ってきました。財政政策では国家経済回復プログラム(規模約580兆ルピア(約4.6兆円)、通称「PEN」)を実施。財政措置(貧困層向けの社会的支援、税優遇、中小零細企業の金利補助など)、資金供給(国営企業への公的資金注入、銀行に対する資金供給等)、省庁予算の追加(観光分野等への景気刺激)、地方政府支援(自治体への貸付等)を主な内容としています。PENは21年度も引き続き編成され、予算規模は前年比19%増の約688兆ルピア(約5.2兆円)、省庁・地方政府と社会保障向け予算のほか、保健関係、失業対策、情報通信技術分野に集中的に配分される予定となっており、このうち社会保障分野では生活必需品の配布や就職促進、村落支援、現金給付などを行う内容となっています。また、ワクチン接種や中小零細企業、企業融資などもこの枠内で行う予定になっています。金融政策面でも積極的な姿勢が目立ちました。新型コロナウイルスの感染が確認された昨年3月以降、中銀は政策金利を累計1.50%引下げ、現在は過去最低となる3.50%まで引き下がっています。またルピア防衛のために積極的な為替介入を行っていることも公言しており、2020年4月2日には1998年6月以来の安値となる1ドル=16,741ルピアを記録したものの、その後は14,000-14,500ルピアの幅で安定しています。*9) 2020年度の財政赤字は対GDP比▲6.09%となる見込み。為替、金利、外貨準備高の推移3.5%6.0%Jan‒21Oct‒20Jul‒20Apr‒20Jan‒20Oct‒19Jul‒19Apr‒19Jan‒19Oct‒18Jul‒18Apr‒18Jan‒1813,00013,50014,00014,50015,00015,50016,00016,500110,000120,000130,000140,000150,000160,000170,000180,000190,00017,000(百万ドル)(ルピア/ドル)(出 インドネシア銀行より著者作成)(注 外貨準備高は月末の値)外貨準備高(左軸)政策金利為替レートワクチン接種状況については、1月11日に中国シノバック社製ワクチンの緊急使用承認、1月13日からジョコ大統領が最初の被接種者となってワクチン接種開始されました。医療関係者を最優先に、最終的には全ての国民を対象とした接種を予定しています。こうした取組から、2021年の経済成長率は概ね5%程度の成長率まで回復すると見込まれています。(3)将来への不安他方、こうした各種施策は、他国の新型コロナウイルス対策同様に、その財源について将来性を不安視する声が上がっています。2カ年にわたる巨額の財政政策であるPENについては、中銀に財政赤字の半分を直接引き受けさせる財政ファイナンスを財源の一部としています。また、アジア通貨危機の教訓から、インドネシアは財政赤字対GDP比の法定上限(▲3%)を厳格に守ってきましたが、新型コロナウイルス対策のために、2022年度までの法定上限の一時停止を発表しています*9。今後の感染状況次第や経済の動向では、こうした施策の更なる延長を必要とする可能性も否定できません。加えて、足元のインフレ率は中銀の設定するインフレターゲット下限を下回っていますが、政策金利は過去最低まで下がっているなど、今後の金融政策運営は非常に厳しい状況にあるといえます。 4 インドネシアの将来性とはこうしたコロナ禍による影響もあって、このところの経済成長は低調気味ですが、他方でインドネシアは58 ファイナンス 2021 Apr.連載海外 ウォッチャー

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