ファイナンス 2021年4月号 No.665
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その後は新規感染者数の増加に伴い、欧州各国で10月以降に制限措置が講じられたことから、ユーロ圏全体の第4四半期(10~12月期)の成長率は、再び前期比でマイナス成長となっている(前期比年率▲2.6%)。次に個別の経済指標について見ると、まず消費については、小売売上高、自動車販売、消費者信頼感全てでロックダウン措置が講じられていた2020年4月に底をつけ、その後は徐々に回復していたが、感染が再び広がり始めた9月以降は弱い動きを見せている(図表3、図表4、図表5)。また、企業の生産をみると、鉱工業生産は消費同様に4月に底をつけた後、回復基調に転じているが、世界的な景気の落ち込みの影響から輸出中心に回復が鈍く、依然として前年割れの水準が続いている(図表6)。企業マインドについてPMI(購買担当者景気指数)を見ると景気縮小・拡大の節目である50を上回る局面もあったが、ユーロ圏では感染拡大の影響が大きいサービス業は、足もとで再び50を割り込んでいる状況となっている(図表7)。雇用については、主要国政府が企業支援策等を実施したこと、ロックダウン措置により求職活動が阻害されていたことを理由として失業率の上昇は抑えられていたが、足元では緩やかに上昇している(図表8)。特に感染症の影響が大きいサービス業の雇用情勢は深刻であり、政府支援がいつまで継続するかにもよるが、失業率の更なる上昇には警戒感が強まっている。(3)今後の見通しについて今後の見通しについては、2021年2月11日に公表された欧州委員会(European Commission)の見通しによれば、ユーロ圏経済の成長率は2020年に▲に6.8%とマイナス成長となった後、2021年に+3.8%、2022年に+3.8%とプラス成長となる見込みとなっている(図表9)。短期的な見通しは感染再拡大や変異株の出現により弱くなっているが、ワクチン接種の進展という明るい兆しも見えており、主に2021年後半と2022年の強い回復を受けて、これまでの予想よりも早くコロナ前の水準を回復するとしている。ただし、他国よりもパンデミックに苦しんでいる国や観光等のセクターに依存している国は回復に時間がかかるとし、またパンデミックの進展とワクチン接種状況に関連する不確実性が高く、今後も予断を許さない状況であるとした。なお、IMFの1月の世界経済見通しにおいてもヨーロッパ諸国の厳しい経済状況が示されており、2020年の経済成長率について、世界が▲3.5%である一方、ユーロ圏は▲7.2%と落ち込みが大きく、2021年についても、世界が+5.5%と回復する一方、ユーロ圏は+4.2%と、回復のペースは鈍いと予想されている(図表10)。図表2 主要国のGDPの推移ドイツフランスイタリア英国▲80100806040200▲20▲40▲6020202019(前期比年率、%)(出所)DatastreamⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠ ファイナンス 2021 Apr.45ヨーロッパにおける新型コロナウイルス感染症対策とグリーンディール SPOT

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