ファイナンス 2021年4月号 No.665
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新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴うヨーロッパ経済等への影響と、感染症対応策、そして感染症終息後を見据えた経済支援策について目玉施策である「欧州復興計画(Recovery Plan for Europe)」を中心にとりあげる。また、EUにおいて、感染症拡大前からの優先度の高い政策分野である環境対策、とりわけ「欧州グリーンディール(European Green Deal)」の動向について、経済支援策との関係性に焦点を当てながら述べていきたい。1新型コロナウイルス感染症とヨーロッパ経済社会の現状(1) 新型コロナウイルス感染症とヨーロッパの動き2019年末、中国湖北省武漢市で初めて感染が確認された新型コロナウイルスは、2020年に入ると日本を含むアジア諸国、そして欧州や米国へと感染が拡大し、新興国・発展途上国を含む世界各国に大きな混乱をもたらすこととなった。本レポートが対象とするヨーロッパにおいても感染症による影響は深刻である。感染急拡大期の2020年3月から、外出制限、店舗閉鎖、国境を跨ぐ移動の停止などの移動制限措置が矢継ぎ早に実施され、その結果、5月頃には新規感染者数の増加傾向に歯止めが掛かかることにつながったが、一方で企業の生産活動は著しく制限され、個人消費などの最終需要にも深刻な影響が及ぶこととなった。その間、各国政府や中央銀行は、積極的な財政・金融政策により実体経済を下支えすることに努めたが、9月頃から新規感染者数が再び増加傾向に転じると、主要国では10月以降、夜間の外出禁止や飲食店の営業停止などの制限措置が強化され、再びサービス業を中心に経済活動に影響が出ている。(2)ヨーロッパ経済の現状具体的にヨーロッパ経済への影響について、まずはユーロ圏全体の国内総生産(GDP)の成長率について見ると、2020年第2四半期(4~6月期)は、新型コロナウイルスの影響により景気は急速に悪化したため過去最大の落ち込み幅を記録した(前期比年率▲38.8%)。他方、新規感染者数が減少傾向に転じた4、5月頃から各国において感染拡大防止策の緩和フェーズに入ったことを背景に、第3四半期(7~9月期)には大きくリバウンドし過去最大の伸び幅を記録した(前期比年率+59.9%)(図表1)。また、各国別に見るとその変動状況にはばらつきが見られる。第2四半期では、感染拡大が緩やかであったドイツは相対的に落ち込みが限定的であったのに対し(前期比年率▲33.5%)、感染者数が多く観光への依存度の高いスペイン(前期比年率▲54.5%)や、GDPに占める非製造業の割合の高い英国(前期比年率▲57.0%)の落ち込み幅が大きかった(図表2)。その後、第3四半期には各国で大幅な回復を達成したが、それでも大半の国でGDPは前年比で依然マイナスとなっている。大臣官房総合政策課 古市 庸平/広田 太志/時永 和明ヨーロッパにおける 新型コロナウイルス感染症対策と グリーンディール図表1 ユーロ圏GDPの推移▲45▲30▲1501530456020202019(前期比年率、%)(注)年率値は当課試算。季節調整値。(出典)Eurostat、Datastream個人消費在庫投資純輸出総固定資本形成政府支出実質GDPⅣ0.4Ⅲ0.9Ⅱ0.8Ⅰ1.9Ⅳ▲2.6ⅢⅡⅠ▲14.2▲38.859.944 ファイナンス 2021 Apr.SPOT

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