ファイナンス 2021年4月号 No.665
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について発効した場合には、他の締約国での生産行為や付加される価値も累積の対象に含めることを検討することになっています。税関手続・貿易円滑化では、各締約国の関税法令の適用における予見可能性、一貫性及び透明性を確保するとともに、通関の迅速化や税関手続の簡素化を図るためのルールを規定しています。通関の所要時間等に関して数値目標が設定され、例えば、「通関に必要な全ての情報が提出された後48時間以内に通関を許可する手続を、また急送貨物に関しては6時間以内に貨物の引取りを許可する手続を採用又は維持する」といった内容が規定されています。また、関税分類等に関する事前教示の義務規定も盛り込まれています。投資に関しては、投資環境整備のための法的枠組みとして、投資時の技術移転の要求やロイヤリティ規制を含む特定措置の履行要求の禁止が規定されています。知的財産に関しては、例えば、著名な商標が自国や他国で登録されていないこと等のみを理由として保護の対象から外すことを禁じる規定等、WTO協定(TRIPS協定)を上回るルールを規定しています。また、電子商取引に関しては、先述の日英EPAでご紹介したTPP3原則のうち、「Data Free Flow(国境を越えた自由なデータの移行)」と「Data Localization(サーバを自国に置くことを強要してはいけない)」の2つがRCEPでも規定されました。なお、残りの「Source Code(プログラムの開示の禁止)」は、現時点では入っていませんが、発効後に改めて検討して見直すという規定が入っています。日本がEPAを初めて結ぶ中国・韓国を含めたRCEPメンバー国との間でこうしたルールを合意できたことは、大きな意味があると考えています。【RCEPの主な内容:酒類、たばこ、塩の合意概要】(資料4、5)財務省所管物資の合意概要については、特に、清酒をはじめとする日本産酒類について、日本がこれまでEPAを締結していない中国・韓国との間で関税撤廃を獲得しています。例えば、韓国においては、日本から輸出されるビールに対し30%もの高い関税が課されています。RCEPでは、日本から韓国に輸出されるビー(資料2)RCEPの主な内容(物品の貿易)(出典:財務省貿易統計より作成)工業製品14か国全体で約の品目の関税撤廃を獲得。中国及び韓国における無税品目の割合が上昇(中国:8%→86%、韓国:19%→92%)。(最終的な関税撤廃品目の例)•中国:電気自動車用の重要部品(モーターの一部、リチウムイオン蓄電池の電極・素材の一部)、ガソリン車用の重要部品(エンジン部品の一部、エンジン用ポンプの一部)、鉄鋼製品(熱延鋼板の一部、合金鋼の一部)、繊維製品(合成繊維織物の一部、不織布)。•韓国:自動車部品(カムシャフト、エアバッグ、電子系部品)、化学製品(液晶保護フィルムの原料)、繊維製品(合成繊維織物の一部、綿織物の一部)。•インドネシア:鉄鋼製品(ばねの一部、貯蔵タンク)。•タイ:ディーゼルエンジン部品の一部。農林水産品等中国等との間で我が国の輸出関心品目について関税撤廃を獲得。(最終的な関税撤廃品目の例)•中国:パックご飯等、米菓、ほたて貝、さけ、ぶり、切り花、ソース混合調味料、清酒。•韓国:菓子(キャンディー、板チョコレート)、清酒。•インドネシア:牛肉、醤油。工業製品化学工業製品、繊維・繊維製品等について、関税を即時又は段階的に撤廃。農林水産品等重要5品目(米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物)を関税削減・撤廃から除外。中国に対しては、鶏肉調製品や野菜等(たまねぎ、ねぎ、にんじん、しいたけ、冷凍さといも、冷凍ブロッコリー、うなぎ調製品等)を関税削減・撤廃の対象とせず。日本産品のRCEP協定締約国市場へのアクセス【対日関税撤廃率(品目数ベース)】~(ASEAN・豪・NZ)、(中)、(韓)RCEP協定締約国産品の日本市場へのアクセス【日本の関税撤廃率(品目数ベース)】(対ASEAN・豪・NZ)、(対中)、(対韓)総計67.8兆円総計68.4兆円中国22.0%韓国7.0%豪州1.9%N Z0.3%ASEAN14.4%インド1.4%米国18.4%E U9.2%英国1.7%台湾6.9%メキシコ1.3%その他15.4%日本の輸出に占めるRCEP締約国の割合(2020年※確々報値)RCEP45.6%RCEP以外54.4%中国25.4%豪州5.5%韓国4.1%N Z0.4%ASEAN15.5%インド0.7%E U11.2%米国10.8%台湾4.1%カナダ1.7%その他20.6%日本の輸入に占めるRCEP締約国の割合(2020年※確々報値)RCEP51.7%RCEP以外48.3% ファイナンス 2021 Apr.33日英EPAとRCEP協定の概要について SPOT

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