ファイナンス 2021年4月号 No.665
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【RCEPの主な内容:物品の貿易】(資料2)物品貿易交渉の結果について、譲許表*4は国によって異なりますが、日本から輸出される際の関税撤廃率(品目ベース)は、ASEAN・豪州・ニュージーランドが86~100%、中国が86%、韓国が83%となっています。今まで日本がEPAを締結していなかった中国と韓国については、RCEPにより、日本からの工業製品の輸出品目に占める無税品目の割合が、中国では8%から86%に、韓国では19%から92%に、それぞれ大幅に広がることになります。工業製品では、例えば、インドネシアにおける鉄鋼製品、韓国における自動車の電動化に必要な電子系部品、中国における電気自動車用のモーターの一部等について、新たに関税が撤廃されます。農産品の輸出関心品目についても、関税撤廃を獲得しています。中国におけるパックご飯、米菓、ほたて貝等、韓国における菓子等、インドネシアにおける牛肉、醤油等で、関税撤廃を獲得していま*4) 関税を引き下げる約束を「関税譲許」と言い、EPAの協定上で、品目ごとに、関税引下げのステータスが記載されたものを「譲許表」と呼びます。RCEPは複数の国が参加しているEPAなので、ASEAN・豪州・ニュージーランド向けの譲許表、中国向けの譲許表、韓国向けの譲許表の3つがあります。す。また、酒類について、中国及び韓国における清酒等の関税撤廃も獲得しています。また、RCEPの国から日本への輸入に係る関税撤廃率については、ASEAN・豪州・ニュージーランドが88%、中国が86%、韓国が81%となっています。輸入農産品については農水省が掲げる重要5品目(米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物)は譲許から除外されました。【RCEPの主な内容:ルール分野】(資料3)原産地規則では、他の締約国で生産された原産材料を自国の原産材料とみなす「累積」の規定が導入されています。このため、例えば、日本からASEANに原産材料の部品を輸出して組み立てた製品を中国に輸出する場合に、RCEPに基づく特恵税率が適用される等、地域に拡がるサプライチェーンのメリットが向上することが期待できます。また、本協定がすべての締約国(資料1)地域的な包括的経済連携(RCEP)協定‣本協定は、世界のGDP、貿易総額及び人口の約3割、我が国の貿易総額のうち約5割を占める地域の経済連携協定。‣地域の貿易・投資の促進及びサプライチェーンの効率化に向けて、市場アクセスを改善し、発展段階や制度の異なる多様な国々の間で知的財産、電子商取引等の幅広い分野のルールを整備。意義ASEAN10か国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)、日本、中国、韓国、豪州及びニュージーランド(NZ)。■人口22.7億人(2019年)(世界全体の約3割)■GDP25.8兆米ドル(2019年)(世界全体の約3割)■貿易総額(輸出)5.5兆米ドル(2019年)(世界全体の約3割)‣2012年11月、RCEP交渉立上げを宣言。‣2013年5月以降、31回の交渉会合、19回の閣僚会合、4回の首脳会議を開催。‣2020年11月、第4回RCEP首脳会議の機会に署名。経緯※インド(2019年11月以降交渉不参加)については、復帰を働きかけたが、本年の署名に不参加。協定は、発効日からインドによる加入のために開かれている旨規定(インド以外の国は発効後18か月を経過した後にのみ加入可)。また、インドの将来的な加入円滑化や関連会合へのオブザーバー参加容認等を定める15か国の閣僚宣言を発出。対象分野参加国物品の貿易/原産地規則/税関手続及び貿易円滑化/衛生植物検疫措置/任意規格、強制規格及び適合性評価手続/貿易上の救済/サービスの貿易/自然人の一時的な移動/投資/知的財産/電子商取引/競争/中小企業/経済協力及び技術協力/政府調達/紛争解決等(資料1)地域的な包括的経済連携(RCEP)協定Japan Customs32 ファイナンス 2021 Apr.SPOT

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