ファイナンス 2021年4月号 No.665
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1はじめに日英EPAの発効及びRCEPの署名を踏まえ、3月号では、まず、日英EPAの概要等について紹介しました。本稿では、3月号に引き続き、RCEPの概要、及びEPAの利用促進に係る財務省関税局の取組について紹介します*1。2RCEPの概要【協定への署名】(資料1)RCEPは、ASEAN10カ国*2に日本、中国、韓国、豪州、ニュージーランドの5カ国をあわせた計15カ国の間での経済連携協定です。日本にとっては、中国、韓国を含む初めての経済連携協定ということで、経済界からも大きな注目を集めています。RCEPは2012年11月に交渉立ち上げが宣言され、8年間の交渉の後、2020年11月15日に署名されました。当初は先述の15カ国にインドを加えた16カ国で交渉を続けてきましたが、2019年11月にインドは突然RCEP交渉からの離脱を示唆し、他の15カ国から復帰の働きかけを行ったものの、インドは不参加のまま15カ国で署名に至りました。残りの15カ国はインドがRCEPに戻ってくればいつでも歓迎するとして、RCEPがインドによる加入のために引き続き開かれている旨規定されています(インド以外の国は発効後18か月を経過した後にのみ加入可)。現在、発効に向けて我が国を始めとして参加国においてそれぞれ作業を進めているところです*3。*1) 文中、意見等に係る部分は筆者の個人的見解です。*2) ASEAN10カ国とは、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム。*3) RCEPの場合、(1)ASEAN10カ国のうち少なくとも6カ国、及び(2)非ASEAN5カ国のうち少なくとも3カ国が国内手続きを終えて批准書を寄託した後60日後に発効することになっています。日本の国内手続きとしては、今通常国会での審議・承認を目指しているところです。発効の具体的な時期は各国の準備状況に左右されるため、現時点で明言するのは難しい面があります。【RCEPの意義】RCEPは世界のGDP、貿易総額及び人口の約3割を占める巨大な経済圏であり、日本にとって主要な貿易相手国である中国と韓国が含まれるなど、日本の貿易総額のうち約5割を占める地域との経済連携協定です。RCEPにより、日本と世界の成長センターであるRCEPの地域とのつながりがこれまで以上に強固になり、これを通じて日本の経済成長に寄与することが期待されます。また、市場アクセスの改善により、地域の貿易・投資の促進やサプライチェーンの効率化が期待される点や、発展段階や制度の異なる多様な国々の間で知的財産、電子商取引等の幅広い分野のルールを整備した点が、大きな意義としてあげられます。(写真) RCEP署名式(2020年11月15日)(首相官邸ホームページより)日英EPAとRCEP協定の 概要についてその2:RCEPについて関税局経済連携室課長補佐 恵﨑 恵 ファイナンス 2021 Apr.31SPOT

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