ファイナンス 2021年4月号 No.665
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1.基本的考え方令和3年度予算の公共事業関係予算については、「令和3年度予算の編成等に関する建議」(令和2年11月25日、財政制度等審議会・財政制度分科会)も踏まえ、主に以下のような考え方により、編成を行った。○ 公共事業関係費は、一般歳出の中で社会保障関係費に次ぐ規模となっている。国際比較の面からとらえると、平成29年度の政府の固定資本形成は、GDP比でOECD諸国の中で中位であり、過去の投資の累積を反映する政府の固定資本ストックはGDP比107.5%と推計され、OECD諸国の中で1位である。○ これまでの財政健全化の取組によって、令和2年度では、ピーク時に比して当初予算ベースで4割減、補正予算後で半減の水準(臨時・特別の措置を除く)となってはいるものの、政府全体の財政規模において社会保障以外の支出全体では、OECD諸国に比して低い水準であることを考えると、我が国の公共事業関係費は、なお、相対的に高水準にとどまっている。○ 公共事業予算における「量」から「質」への転換の更なる進展へ、改革の手を緩めるわけにはいかない。○ こうした中、平成30年7月豪雨や北海道胆振東部地震等を踏まえて実施された「重要インフラの緊急点検」の結果に基づき、「3か年緊急対策」が講じられた。この結果、令和元年度と令和2年度の当初予算においては、「3か年緊急対策」を臨時・特別の措置の一環として実施したため、約6兆円から一時的に約7兆円に増額され、規模は拡大している。○ 3か年緊急対策として実施された公共事業等の執行状況を見てみると、過去5年の平均と比べ、3月末における契約率に大きな差はないものの、支出率は低い水準にとどまった。こうしたこともあり、公共事業関係費の繰越額は令和元年度において3.9兆円と平成26年度の1.8兆円に比べて2倍以上となっている。繰越額については、執行の平準化の観点から必要な額は認められると考えられるものの、予算の適正な計上の観点から、増加傾向が続くことは望ましくない。○ また、社会資本が概成しつつある中で、人口減少等により、社会資本における人口一人当たりの維持管理コストの増加が見込まれることに鑑みれば、むやみな新規投資や老朽化の進展に伴う維持更新コストの更なる増加を避ける必要がある。○ さらに、公共事業の担い手である建設業者の手持ち工事量は増加傾向にある一方で、有効求人倍率は高い水準が続き、人手不足が懸念されている。今後労働力人口が減少する中で建設業の労働力確保は引き続き課題であると見込まれるため、建設業におけるICT化など生産性向上が必要な状況となっている。○ 以上の点と厳しい財政事情を踏まえれば、予算規模の量的拡大よりも優先順位を付けて配分の重点化をしっかりと推進することが肝要である。○ 今後の社会資本整備に当たっては、人口減少を前提とした上で、ストックの集約・長寿命化や新規整備の重点化による人口一人当たり維持更新コストの増加抑制に留意しつつ、令和3年度 国土交通・公共事業関係予算について主計局主計官 藤﨑 雄二郎20 ファイナンス 2021 Apr.特 集

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