ファイナンス 2021年4月号 No.665
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では、農業経営の生産性向上に向け、農地の集積のみならず、まとまった形での集約を進めるべく、農地バンクを通じた農地集約へのインセンティブを拡充することとしている(機構集積協力金交付事業:35億円)。(2) サプライチェーン全体の生産性向上へ向けた課題への対応また、これまでの農政は「生産現場」に焦点を当てた施策が中心であったが、流通・小売を含めたサプライチェーン全体を視野に入れて展開することが重要である。デジタル技術による各主体のデータ共有を進めながら、消費者ニーズに的確に対応した新たな価値を創造していくという視点は輸出拡大に当たっても不可欠である。そのため、農林水産行政に関する補助金申請等の手続を全てデジタル化し、農地の現地情報との統合も可能とする農林水産行政におけるDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進(令和3年度予算:39億円、令和2年度第3次補正予算:62億円)することとし、これにより、行政組織の効率化・働き方改革や補助金の申請事業者の負担軽減を図るとともに、将来的なフードサプライチェーン全体のデジタル化へつなげることとしている。(3) 今後の中山間地域の農地管理の在り方への対応さらに、人口減少が著しい中山間地域対策も急ぐ必要がある。将来的な人口動態を踏まえつつ、農地が無計画に荒廃していかないよう、どこまでを耕作地として維持し、どこまでを粗放的管理に委ねるのか、各地域での具体的な管理の在り方を検討すべきである(資料4参照)。そのため、令和3年度予算では、食料自給力維持のための農地等の粗放的な利用の実証(農山漁村振興交付金における「最適土地利用対策」の新資料2 経営規模別の農業粗収益と農業経営費(水田作経営)2202232081631801591321411171371331341011171078391806.99.510.810.613.623.528.423.001020304050607080901000501001502002501.0~2.0ha2.0~3.0ha3.0~5.0ha5.0~7.0ha7.0~10.0ha10.0~15.0ha15.0~20.0ha20.0~30.0ha30.0ha~水田作作付延べ面積10a当たり農業粗収益水田作作付延べ面積10a当たり農業経営費農業粗収益に占める補助金等受取金の割合(%)経営規模別の農業粗収益と農業経営費(水田作経営)水田作経営(主業)における農業粗収益及び農業経営費(水田作作付延べ面積規模別)(出所)農林水産省「農業経営統計調査平成30年営農類型別経営統計(個別経営)」(千円)(%)補助金等受取金201205186146156122941097634.8資料3 大規模経営体の農業粗収益の増加に向けた課題主食用米137.9大規模経営体の農業粗収益の増加に向けた課題1.水田(226.1万ha)の利用状況(令和元年)水田活用の直接支払交付金の対象(令和2年度予算額:3,050億円)(61%)その他(不作地を含む)35.0(24%)(単位:万ha)(出所)農林水産省「米をめぐる関係資料」等生産量(令和元年):726.1万t53.22.経営規模別の「水田活用の直接支払交付金」(うち戦略作物助成)の交付対象者数・交付対象面積の割合(令和元年)経営規模3ha未満3~5ha5~10ha10~15ha15ha以上全体交付対象者数の割合65%11%11%5%9%100%交付対象面積の割合12%6%12%10%60%100%16 ファイナンス 2021 Apr.特 集

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