ファイナンス 2021年3月号 No.664
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永平寺町ており、今回も、アルコール製造を依頼したところ、快諾いただき、全国的に消毒用アルコールが不足する令和2年5月中に学校、医療機関、福祉施設、町内事業所に消毒用アルコールを供給することができました。3自動運転による地域の足の確保永平寺町で実施されている特徴的な事業のひとつに「自動運転」の実証事業があります。平成29年に、経済産業省・国土交通省による、「専用空間における自動走行等を活用した端末交通システムの社会実装に向けた実証」における「実証評価地域」の選定を受けて、永平寺町での自動運転の取組みはスタートしました。平成30年には、公道で世界初となる「1人の遠隔監視・操作者が2台の自動走行車両を運用」する実証を行い、翌年には、当時日本最長の実証期間である6ヵ月間の連続実証を実施しました。永平寺町を舞台として、技術面のテストだけではなく、どのようにすれば住民に受け入れられ、地域に根ざした移動手段となるか、移動販売車との連携、小学生の下校時への活用など、社会受容性についても多くの検証を実施しています。自動走行車両による小学生の下校令和2年度、自動運転の実用化に際しての愛称を募集し、選定の結果「ZEN drive」に決定しました。永平寺町という地域性を基本に、自動運転という先端技術が人に寄り添い、自然環境への負担が少ない乗り物になること、地域に根ざした文化・生活と、自動運転という文明が調和し、共生できる仕組みを目指すことが、愛称決定の理由のひとつです。自動運転の実用化が始まりましたが、これはゴールではなく、新たなスタートであると考えています。現在の技術と制度の中での自動運転が達成されたわけですが、今後は自動運転が提供できるサービスの質を高め、地域みんなが豊かになる、笑顔になるモデルを目指して取組んでいきます。4地域住民が担う近助タクシー自動運転の実証事業をきっかけとして、交通機関、物流企業、福祉・介護、観光分野の皆さんにお集まりいただき、町の新しい交通・まちづくりのあり方を検討する「永平寺町MaaS会議」を設立しました。その会議で検討し、実現した事業のひとつに、「近助タクシー」事業があります。高齢化率約4割の永平寺町志比北・鳴鹿山鹿地区には、病院やスーパー等がなく、移動手段の確保が長年の課題となっていました。そこで、令和2年10月から、意欲ある地域住民がドライバーとなり、地元郵便局やまちづくり会社、トヨタ販売店各社と協働で、自宅から目的地までをドアツードアで結ぶデマンドタクシー「近助タクシー」の本格運行を実施しています。「近助タクシー」は、高齢者をはじめとした移動手段の確保、外出機会の創出を目的として運行し、地域の足として活躍していることはもちろん、地域住民によるドライバー制度も地域コミュニティの拡大に役立っています。また、コロナ感染対策における町内飲食店支援として、町内飲食店のお弁当を町内各事業所に「近助タクシー」で配達する「近助メシ」の取組みを行うなど、地域の課題に柔軟に対応できるよう努めています。今後は、貨物事業者と連携した「貨客混載」を行い、「ヒトとモノ」が融合した地域交通のニーズ検証を実施し、地域に根づいた活動としていく予定です。90 ファイナンス 2021 Mar.連載各地の話題

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