ファイナンス 2021年3月号 No.664
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展途上国、(3)特別な扱いが必要な国、に分類され、段階的な関税撤廃が課せられる。発展度合いが相対的に高い(1)発展途上国は、タイフライン90%は5年、センシティブ品目7%は10年で関税撤廃、また3%を非対象品目とすることができる。(2)後発発展途上国は、タリフライン90%は10年、センシティブ品目7%は13年で関税撤廃、3%を非対象品目とすることができる。(3)特別な扱いが必要な国*9は、タリフライン90%は15年以内に関税撤廃等、より譲許的な条件が課せられる*10。とはいえAfCFTA設立協定は枠組み協定に過ぎず、2021年1月からの運用開始が決定されてもなお、AfCFTAを構成するフェーズ1とフェーズ2の全交渉は妥結してない。フェーズ1は発効済みとされるが、物品貿易議定書、サービス貿易議定書、紛争解決議定書のうち、物品貿易議定書附属書の譲許表や原産地規則、サービス貿易議定書付属書の約束表といった実際の貿易実務の根幹については、合意に至ったとの情報には未だ接していない(本稿執筆時2021年1月現在)。また知的財産権、競争政策、投資を扱うフェーズ2交渉がいつから始まるのか、投資章では投資家対国家の紛争解決(ISDS条項)を含むのか、更にはコロナ下で現実的な貿易チャンネルとして期待される電子商取引章を追加すべくフェーズ3交渉を行うのか、といった論点も出ているが、いずれも明確な方針は示されていない。AfCFTAは2021年1月からの運用開始が宣言されたが、外部の立場からは、現場の貿易実務がどのように展開されるのかについては、俄には具体的なイメージを掴むのは容易ではない。3. 「アフリカ新時代の最先端」 -AfCFTAへの期待AfCFTA開始に際し2020年AU議長国の南アフリカのラマポーザ大統領は、「我々は、アフリカ大陸の進化における新時代の最先端に立っている。我々が真摯に努力し目指してきた瞬間がついに到来した。我々*9) G6と称されるエチオピア、マダガスカル、マラウィ、スーダン、ザンビア、ジンバブエ。*10) https://www.un.org/ldcportal/african-continental-free-trade-area/*11) World Bank(2020),“The African Continental Free Trade Area –Economic and Distributed Effects”はこの瞬間のためにどれだけ遠くまで到達したか、素晴らしい誇りに満たされている。」と述べたが、本節ではAfCFTAがもたらすとされる正の影響を概観する。世銀*11は、アフリカ大陸全体のGDPは3.4兆ドル規模とし、AfCFTAは貿易活動、特に製造業における地域間貿易を顕著に促進し、2035年までにアフリカの総貿易量は29%上昇、アフリカ域内貿易は81%上昇し、アフリカの製造業者や労働者に新たな機会を創出するとしている。その結果、2035年までにアフリカの実質所得は7%、約4,500億ドル上昇し、3,000万人が極貧から、6,800万人が貧困から抜け出すことに貢献するとしている。筆者が在勤するAU本部のお膝元、エチオピアの首都アディスアベバでは、AfCFTA開始に伴い多くの議論、セミナー等が開催されたが、上記世銀の見解含めAfCFTAがもたらす正の影響について以下のようなナラティブが多く語られた。AfCFTAの下で、アフリカの地元企業は製造拠点を複数国に分散させ、各地域の比較優位に基づきビジネスを展開、競合する同業他社と切磋琢磨し競争力を培い利益の最適化を図る。それが地域バリューチェーンとなって、アフリカ企業間のビジネスネットワークが一層緊密化する。これまでは既存のRECs内を市場としたアフリカに進出する海外企業はより広大な市場にアクセス可能となり、大陸への海外直接投資(FDI)への関心が一層高まる。アフリカの人口構成もAfCFTAへの追い風であり、現在12億のアフリカ人口は、2030年に13億人、2050年に25億人となり、近い将来、人類の4人に1人がアフリカ人となる時代が来ると言われている。毎年1億2,000万人の若いアフリカ人労働者が市場に供給され、FDIや製造業振興を下支えし、人々の所得向上に伴いアフリカ大陸は大きな消費熱を有する成長著しい市場としてグローバル経済に組み込まれる。家計や企業の可処分所得が増加すれば貯蓄や投資欲求が高まり、金融業やサービス業も発展する。人口に占める割合が大きい若年層はモバイル機器等 ファイナンス 2021 Mar.65海外ウォッチャーFOREIGN WATCHER連載海外 ウォッチャー

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