ファイナンス 2021年3月号 No.664
46/102

市場流通を認めるという合意がなされていたところ、日英EPAではこの日EU・EPAの合意に加え、さらに五合瓶についても緩和するとの約束を取り付けました。なお、英国から日本への輸入に関しては日EU・EPAと同内容を維持しています。【日英EPAの原産地規則と拡張累積】(資料8)原産地規則も基本的には日EU・EPAと同内容を維持していますが、日英EPAについては、新たに拡張累積という規定が導入されました。日本とEUとの関係で見れば、例えば、フランスの原産材料を使って英国で製造したものを日本に輸入する場合、英国がEU加盟国であった時は、EU内での物品の移動だけなので、日EU・EPAの下では原産品として認められていました。しかし、英国のEU離脱後には、フランスの原産材料を使って英国で製造したものを日本に輸出した場合、フランスの原産材料が日英EPAの下では原産材料にならないという問題が発生してしまいます。これをクリアするために「拡張累積」を導入し、EUの原産品を使って英国または日本で作ったものは、日英EPA上の「原産品」として認められることとされました。【その他の日英EPAの成果】その他の日英EPAの成果について、電子商取引では「TPP3原則」と言われる規定が盛り込まれました。「TPP3原則」とは、(1)「Data Free Flow(電子データの国境を越えた自由な流通を認める)」、(2)「Data Localization(サーバを自国内に置くことを強要してはいけない)」、(3)「Source Code(プログラムの開示を要求してはいけない)の3つです。また、競争政策で消費者保護に関する規定が盛り込まれていることや、新たに「貿易及び女性の経済的エンパワーメント(ジェンダー)」に係る章が規定されたことも成果となっています。日英EPAは2021年1月1日に発効し、特段の混乱なく運用されています。以上が、日本の経済連携協定交渉等の現状及び、日英EPAの概要となります。次回は、4月号にて、RCEPの概要等をご紹介いたします!(資料7)日英EPA:酒類、たばこ、塩の合意概要酒類、たばこ、塩について、日EU・EPAと同内容を維持。【英国産品の日本市場へのアクセス】【関税撤廃】酒類、たばこ、塩について、全て関税を即時撤廃。(日EU・EPAと同内容を維持)【地理的表示(GI)】GI「日本酒」などの酒類GIを保護。(日EU・EPAと同内容を維持)【非関税措置】「日本ワイン」に係る輸入規制を撤廃。(日EU・EPAと同内容を維持)単式蒸留焼酎の容器容量規制について、四合瓶・一升瓶に加え、新たに五合瓶についても緩和。(日EU・EPAを一部拡充)【日本産品の英国市場へのアクセス】関税撤廃、日本産酒類の地理的表示(GI)の保護について日EU・EPAと同内容を維持するとともに、英国における日本産酒類に係る非関税措置のさらなる緩和を確保42 ファイナンス 2021 Mar.SPOT

元のページ  ../index.html#46

このブックを見る