ファイナンス 2021年3月号 No.664
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【物品貿易交渉の結果】(資料5)物品貿易交渉の結果について、関税撤廃率を品目ベースでみると、日EU・EPAと同じく、日本から英国への輸出の99%が、英国から日本への輸入の94%が、それぞれ関税撤廃となりました。日英EPAは日EU・EPAからの継続性を確保することが主眼とされたので、基本的には日EU・EPAの成果を引き継ぐ内容で合意されています。このため、関税率についても、輸出入双方で日EU・EPAの関税率・撤廃期間に追いつく形(いわゆるキャッチアップ)を適用することとなっています。日本から英国への輸出について、工業品は100%の関税撤廃を達成しました。農産品では輸出関心品目と呼ばれる牛肉、茶、水産物等に関しても関税撤廃を獲得し、日EU・EPAの内容を維持しました。また、財*3) 国産ぶどうのみを原料とし、日本国内で製造された果実酒。*4) 地理的表示(GI:Geographical Indication)とは、例えばシャンパーニュ地方で作られる「シャンパーニュ(シャンパン)」など、正しい産地であることと、一定の基準を満たした品質であることを示すものであり、日本では国レベルのGIである「日本酒」等のほか、清酒の「白山」、ぶどう酒の「山梨」、蒸留酒の「琉球」など、地域ごとに13のGIが指定(令和3年1月時点)されています。また、英国側のGI「スコッチ・ウィスキー」、「アイリッシュ・ウィスキー」、「アイリッシュ・クリーム」の3名称は、日本が保護することとなっています。*5) 関税割当とは、一定の数量枠内までは安い税率を適用し、一定の数量を超えると高い税率が適用される制度。務省が所管する酒類についても、日EU・EPAにおいて、ワインに係るEU側輸入規制を緩和し、日本ワイン*3に関してはEUの市場で流通できるという合意がなされているところ、これが日英EPAでも受け継がれることになりました。また、地理的表示(GI)についても、日EU・EPAと同様、GI「日本酒」等の酒類GI8名称が英国で保護されることとなりました*4。英国から日本への輸入についても、基本的に日EU・EPAと同じ内容を維持しており、農産品に関しては日EU・EPAの範囲内の内容となっています。関税割当について、日EU・EPAでは農産品25品目について関税割当*5が設定されていますが、英国には新たな関税割当は設定しませんでした。ただし、チーズ等の一部品目(25品目のうち10品目)で、日EU・EPAの関税割当に利用残が生じた場合に限り、それ(資料5)物品貿易交渉の結果•全体として日EU・EPAの関税率・撤廃期間に追いつく形で適用(いわゆる「キャッチアップ」)。•工業製品について100%の関税撤廃を達成。•牛肉、茶、水産物等の主要な輸出関心品目について関税撤廃を獲得した日EU・EPAの内容を維持。•輸入規制の撤廃(日本ワイン)や農産品・酒類GI(地理的表示)の保護を維持、全ての酒類の関税の即時撤廃を継続。•全体として日EU・EPAの関税率・撤廃期間に追いつく形で適用(いわゆる「キャッチアップ」)。•農林水産品の関税については、日EU・EPAの範囲内。•新たな関税割当ては設定せず。ただし、チーズ等の一部品目で、日EU・EPAの関税割当てに利用残が生じた場合に限り、それを活用できる仕組みを設定。•日EU・EPAでセーフガードが設定されている品目(牛肉等)について、日EU・EPAの下でと同じ内容のセーフガードを措置。•工業製品については、100%の関税撤廃(日EU・EPAで即時撤廃したものを同様に即時撤廃)。日本日本英国英国40 ファイナンス 2021 Mar.SPOT

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