ファイナンス 2021年3月号 No.664
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1はじめに2020年10月23日、日英包括的経済連携協定(以下、日英EPA)が署名に至りました。さらに、同年11月15日には、8年間にわたり交渉を続けてきた地域的な包括的経済連携協定(以下、RCEP)が署名に至りました。本稿では、2回に分けて、日本の経済連携協定全体の状況、日英EPA及びRCEPの概要、また、EPAの利用促進に係る財務省関税局の取組について紹介します*1。今月号では、まず、日本の経済連携協定交渉等の状況及び日英EPAの概要について紹介します。2経済連携協定(EPA)交渉等の進捗状況*2(資料1、資料2)日本の経済連携協定交渉等の進捗状況について、これまで24カ国・地域で、合計21の経済連携協定等が発効済・署名済となっています。現在発効済みの協定は、シンガポールを皮切りに19本となっており、今年1月に発効した日英EPAが最新のものとなっています。また、昨年11月に署名されたRCEPは、現在、発効に向けて必要な作業を行っているところです。交渉中のものとしては、コロンビア、日中韓、トルコらがあり、GCC、韓国、カナダについては現在、交渉が中断している状況にあります。日本の貿易総額(輸出額+輸入額)に占めるEPAの発効済・署名済の相手国の貿易割合は、80.4%となっています。RCEPが署名に至るまでは、この割合は52.4%でしたが、RCEP署名により、日本の主要な貿易相手国である中国、韓国が加わったことで80.4%に達したこととなります。RCEPのインパクトの大きさが、お分かりいただけるかと思います。*1) 文中、意見等に係る部分は筆者の個人的見解です。*2) 2021年1月時点。3日英EPAの概要【英国のEU離脱及び日英EPA】(資料3)まず、日英EPAの背景についてご説明します。ご存知のとおり、英国はEUの加盟国でしたが、2016年6月にEU残留・離脱を問う国民投票が行われ、英国はEUからの離脱を選択し、2020年1月末に英EU両方の合意で離脱が実現しました。その際、激変緩和措置として移行期間が設けられ、2020年12月末までは英国はEUの加盟国として扱われることになりました。もともと日本とEUとの間では、日EU・EPAが2019年2月に発効しており、日本とEUの間の貿易には、日EU・EPAの下で特恵税率が適用されています。英国がEU加盟国である間、日本は英国との間でも日EU・EPAの下で特恵税率を適用した貿易が行えますが、英国のEU離脱後も日英間で従来の貿易環境をそのまま維持するためには、日本と英国との間で新たなEPAを結ぶことが必要になり、交渉が開始されました。移行期間と日英EPAの関係では、移行期間終了の翌2021年1月1日に日英EPAが発効すれば、日EU・EPAから日英EPAに切れ目なく移行することとなります。ただし、日英EPAが2021年1月1日に発効しなかった場合は、英国については、2021年からは日EU・EPAの特恵税率が適用できなくなり、一般税率(MFN税率)が適用されることになります。日本企業・日本経済にとっても、ビジネス環境を継続するためには日英EPAが2021年1月1日に発効することが必要であるということで、精力的な交渉が行われました。その結果、2020年6月の交渉開始から3か月という短期間で9月に大筋合意、10月に署名に至り、昨年秋の国会での承認を経て、日英EPAが成立しました。日英EPAとRCEP協定の 概要についてその1:日英EPAについて関税局経済連携室課長補佐 恵﨑 恵36 ファイナンス 2021 Mar.SPOT

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