ファイナンス 2021年2月号 No.663
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界上位10社のうち中国企業2社が1、3位を占めている【図4】。第二に、資金の流れの把握の強化である。2020年10月に開催された上海外難金融サミットで人民銀行デジタル通貨研究所長は、「デジタル人民元の中央集権的管理によりマネーロンダリングやテロ資金供与などの違法犯罪行為を防止し、取り締まることができる。」と述べたほか、それに先立つ2019年2月に習主席も「最新のテクノロジー技術や支払・決済システムは、オンライン・オフライン問わず、また海外・国外問わずに、資本移動をタイムリーに動的にモニターするために使われるべきである。これにより、すべての資本移動は、金融規制当局の監督下で行われることになる。」と発言しており、そもそも金融当局による規制が強まる方向にあった。その中で、人民元が構成通貨となっていないリブラ開発の動きや「アリペイ」・「ウィーチャットペイ」などの民間キャッシュレスサービスの台頭など、資金の流れの把握や金融政策の有効性を妨げたり、マネーロンダリングや脱税・収賄の増加につながる懸念が金融当局にあったと思われる。実際、中国政府は近年、第三者決済機関への規制を強めている。第三に、人民元の国際化である。中国のGDPや輸出の対世界シェアは拡大を続けており、世界における中国の経済的プレゼンスは高まっている【図5】【図6】。そして、これまでも人民元建てクロスボーダー決済システムCIPS(RMB Cross-Border Interbank Payment System)の稼働(2015年)、IMFの特別引出権(SDR)への人民元の採用(2016年)など、人民元の国際化に向けた動きはみられる。しかしながら、現状をみると、CIPSの取引数は国際銀行間通信協会SWIFT(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication)に遠く及ばず【図7】、SWIFTの通貨別シェアを見ても人民元のシェアは2%【図8】、中央銀行の外貨準備における通貨別シェアを見ても1.9%に過ぎず、いずれも国際通貨の米ドルに大きく水をあけられている【図9】。ただし、デジタル通貨は迅速な決済を可能とすることから、一帯一路関係国においてデジタル通貨決済を推し進めることで、これまでの人民元国際化の動きを加速させる可能性もある。法定通貨のデジタル化については各国でも議論が活発になってきており、先行する中国でのデジタル人民元については、今後も動向を注視していきたい。図6:輸出(対世界シェア)の推移0.9%6.7%11.4%12.9%8.6%3.8%中国日本米国19801983198619891992199519982001200420072010201320160161412108642(%)(出所)IMF図5:実質GDP(対世界シェア)の推移25.6%2.7%中国日本米国198019831986198919921995199820012004200720102013201620190403530252015105(%)(出所)IMF9.9%24.8%16.3%6.0%図3:電子決済回数(金融機関・非金融機関)(億回)電子決済回数(金融機関)電子決済回数(非金融機関)02,5002,0001,5001,00050036912369123691236912365782,03520162017201820192020(出所)中国人民銀行図4:5G関連特許出願数上位10社ファーウェイ14.9%サムスン13.2%ZTE12.1%LG10.9%ノキア10.2%エリクソン7.1%クアルコム6.1%インテル 4.1%シャープ 3.5%NTT 3.4%その他14.3%(出所)IPlytics(2020年1月1日時点) ファイナンス 2021 Feb.59コラム 海外経済の潮流 132連載海外経済の 潮流

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