ファイナンス 2021年2月号 No.663
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自分に向かって引き付けるように両腕に力を入れれば、反動をハンドルに逃がすことができます。さらに強く押すために、いわゆる立乗りをするときには、自転車を左右に倒し―右足でペダルを押す場合は左に、左足の場合は右に―、押す足と体幹は動かないようにすると、力のロスを最小にできます。《チートその21:ギア》初歩的な英語の復習として、ギア(gear)は歯車を意味しますが、ここで取り上げるのは、その組み合わせの話。ペダルに直接つながっている歯車(チェーンリング)と、後輪の中央にある歯車(スプロケット)の組み合わせです。わたくしの自転車でいうと、チェーンリングは48・38・28歯の3枚、スプロケットは11~32歯の8枚があり、組み合わせは3×8=24通り。さあ、どれとどれをチェーンでつなげましょう?英語の次は算数(≠数学)です。チェーンリングはペダルと直結しているので、ペダル1周につきこちらも1周。チェーンリングとスプロケットの歯はチェーンにより一対一でつながっているので、それぞれどの歯車につなぐかで、ペダルが1周したときに後輪が何周するか定まります。わたくしの自転車の場合、後輪の最少周回がペダル1周当たり0.875周(28÷32)、最多周回が4.36周(48÷11)。「重い/軽いギア」といいますが、同じペダル1周で多く進めば重く、少ししか進まなければ軽く感じるわけです。以上を前提に、ペダルの回転ペースを一定に保った方が効率よく、一般に90回転/分が目安です。言い換えれば、これより回転数が多ければ1周当たりの距離を延ばし(歯数の多いチェーンリング/少ないスプロケットにシフト)、少ないなら縮め(逆にシフト)ます。ただしこれは、ツールドフランスのような長距離レースが発祥の目安で、疲労が回復しづらい筋肉より、回復しやすい心肺に負担を寄せています。素人だとかなり息が上がりますから、もう少し筋肉に負担を寄せて70回転/分ぐらいでもいいでしょう。前回、「その17」でネックスピーカには意外な使い方があると記しましたが、それが何かといえばこのペースメーカーとして。レーサーは「その15」で触れたサイコンにセンサーをつなげて回転数を測りますが、本連載はそういうガチ路線ではないので、曲に合わせてペダルを回しちゃいましょう。昨今のJ-POPで例示すれば、Ocial髭男dism「Pretender」や米津玄師「Lemon」などが90回転ペース(左右ペダルを分けて180回押すとするならRadwimps「前前前世」など)、LiSA「炎」やあいみょん「裸の心」などが70回転ペース(同、ヨルシカ「ただ君に晴れ」など)なので、道中のお供にどうぞ。《チートその22:コーナーリング》「その2」で止まることを、今回ここまで進むことを主に取り上げたので、自転車の操作を網羅するに、残るは曲がることになります。スピードが出ていなければハンドルを切るだけですが、20km/h前後からは急ハンドルは事故の元、車体を倒して曲がりましょう。慣性の直進力と倒した側の重力のバランスで曲がり方が決まりますが、車体の構造上、倒した分とちょうど釣り合うように前輪が傾いてハンドルが切れるので、ハンドルは操作しなくてよいのです。大切なのは、倒す前に十分に減速しておくこと。平地や上り坂なら問題ないでしょうけれど、下り坂で思わぬスピードが出ていると、慣性が強く曲がり切れないか、十分な重力が効くほど倒した角度ではタイヤのグリップが失われて転倒するかになってしまいます。特に後者は、路面が濡れていたりゴミが積もっていたりすれば、比較的遅いスピードでも起こることも。滑りやすそうな路面では、いつも以上に減速するのは当然として、車体は起こし気味にしてその分自分の体をイン側に倒すことで、グリップを確保することも選択肢に入ってきます。なお、車体を倒すと、イン側のペダルが路面に近づきます。万が一路面に接触すると、バランスが崩れて転倒の原因になるので、イン側のペダルは必ず上げるようにしましょう。《チートその23:好奇心》ここまで4回にわたりいろいろと書いてきましたが、それも自転車沼のほんの浅瀬にすぎません。詳しい人から見れば「違うだろ!」ということも、敷居を下げるために書いたりもしました。自転車は手軽な乗り物ですから、いろんなことを自由に試すことができます。拙稿を超えて使いこなすのも、とっても簡単です。好奇心に導かれ沼に浸かる人が出てくることを、先住の一人として心よりお待ち申し上げております(笑)。 ファイナンス 2021 Feb.51自転車通勤で「なろう」になろう!?連載自転車通勤で 「なろう」になろう!?

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