ファイナンス 2021年2月号 No.663
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からの持ち直しに伴い、前年度比1.8%の増加が見込まれる。これら民間需要全体でGDP全体の4分の3程度を占めることから、我が国経済全体に与える影響も大きく、民需寄与度は2.4%程度と見込んでいる。また、政府支出(政府最終消費及び公的固定資本形成)については、総合経済対策の執行に伴う政府支出の増加や、社会保障関係費の増加等により、前年度比3.3%程度の増加を見込む。公的需要全体では、実質GDPへの寄与度が0.9%程度となる。最後に、財貨・サービスの純輸出は、海外経済が世界的な感染拡大による大きな落込みから回復していく*7ことに伴い、増加することを見込んでおり、実質GDPへの外需寄与度は0.7%程度となる。その他、需要項目以外の項目については、(表-1)を参照されたい。なお、政府経済見通しは各年度の経済の姿を示すものではあるが、足もとの経済の状況を踏まえれば、令和3年度見通しの見通し期間においては、感染症の影響により生じた落込みから経済が段階的に回復していく姿が想定され、当該見通しが実現する場合には、「2021年度末までにGDPは名目・実質ともにコロナ前の水準に回帰し、上回っていくと見込」(西村康稔a.)まれている(図-1参照)。4.まとめ前項で見た通り、2021年度の各項目の成長率や実質GDP成長率への寄与度を見ると、民間需要が同年度の経済成長を主導する見通しとなっている。ただし、2020年度の実績見込みも併せ見れば、民間需要各項目や輸出は、感染症による影響が次第に緩和することに伴い、感染症流行前の水準を取り戻していくことによる反動増が成長率を高めているのに対して、政府支出は累次の補正予算等により両年度を通じて実質GDP成長率に1%弱のプラスの寄与をもたらす見通しとなっていることにも留意すべきである(図-2参照)。これは公的支出による経済の下支えの効果を見込んでいることに他ならないが、令和3年度見通しに示された経済成長が達成できるかどうかは、まずは、足も*7) 世界GDP成長率(日本を除く、実質。)は、2020年度マイナス3.5%に対して、2021年度は5.9%となることを前提としている。との感染拡大を早期に抑制し、その後は感染拡大防止と社会経済活動の両立を実現することにより、民間経済活動の自律的回復を促すことができるかどうかにかかっているといえよう。政府には、なんとしても早期に感染拡大を抑制し、経済が更に下振れすることのないよう、経済財政運営に万全を尽くすことが期待される。32 ファイナンス 2021 Feb.特 集

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