ファイナンス 2021年2月号 No.663
34/92

2021年1月18日に「令和3年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」(以下「令和3年度見通し」という。)が閣議決定された。2020年度の我が国経済ついては、緊急事態宣言下にあった20年4-6月期の経済の落込みが大きかったことや、最近の感染拡大が経済の先行きに及ぼす影響を踏まえて、実質GDP成長率がマイナス5.2%となることを見込んでいる。他方で、2021年度は、「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」(令和2年12月8日閣議決定、以下「総合経済対策」という。)の円滑かつ着実な実施により、公的支出を通じた経済の下支えを図りつつ、設備投資をはじめとする民間需要を呼び込みながら、生産性を高め、賃金の継続的な上昇を促し、民需の自律的な回復も相まって、我が国経済は民需主導の成長軌道を回復していくことにより、実質GDP成長率は4.0%となると見込む。具体的には、「令和3年度予算編成の基本方針」(令和2年12月8日閣議決定)同様に、デジタル社会の実現や、新しい社会を支える「人」・イノベーションへの投資の強化等に取組むこととしている。結果として、我が国のGDPは名目・実質ともにコロナ前の水準に回帰し、上回っていくと見込まれる。本稿では、とりわけ、経済見通しに関する部分について、令和3年度見通しのポイントを紹介するとともに、背景や考え方、作成上の留意点等を補足して解説することとする*1。*1) 本稿では、令和3年度経済見通しの理解に役立てるため、必要に応じて付属情報を補足するよう努めることとしたが、仮に意見に類する部分があればそれは筆者の個人的見解に属する。*2) 第201回国会・衆・総務委(2020年2月20日)における長尾秀樹委員に対する政府参考人答弁「この経済見通しの策定におきましては、制度改革を含む各種政策の効果についても考慮しておりまして、先般の経済対策の裏づけとなる令和元年度補正予算や令和二年度当初予算に盛り込まれた措置による効果を始め、政府として取り組む生産性向上、就労促進に係るさまざまな施策が各需要項目に与える影響を織り込んでおるところでございます。」1.経済見通しの位置づけ過年度も本紙において紹介されているように、政府経済見通しは、(1)翌年度の経済財政運営に当たって、政府がどのような基本的な態度をとるのか、(2)そのような基本的態度に基づいて経済財政運営を行うことによって、経済はどのような姿になるのか、という2点について、政府の公式見解を閣議決定により表明するものである。したがって、政府経済見通しの策定に当たっては、足もとの経済情勢を適切に踏まえて翌年度の経済を予測するのはもちろんのこと、我が国政府が経済財政運営の基本的態度に基づき実行する各種の施策による効果を織込んでおり*2、そのような意味において単なる経済予測ではなく、いわば、今後政策的に実現を目指していく経済の姿を示しているということができる。2.2020年度の日本経済(実績見込み)令和3年度見通しにおいては、2020年度の我が国経済について、「新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にあるが、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」、令和2年度第1次・第2次補正予算の効果も相まって、持ち直しの動きがみられる。他方、経済の水準はコロナ前を下回った状態にとどまり、経済の回復は道半ばである。」としている。最新の四半期別GDP速報(内閣府、2020年令和3年度 政府経済見通しについて内閣府政策統括官(経済財政運営担当)付参事官(経済見通し担当)補佐 明田 侑歩30 ファイナンス 2021 Feb.特 集

元のページ  ../index.html#34

このブックを見る