ファイナンス 2021年2月号 No.663
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本稿では、昨年12月21日に公表した令和3年度国債発行計画の内容を中心として、国債発行を取り巻く最近の動きについて概要を説明したい。1. 令和2年度(補正予算)の国債増発と現下の国債市場の状況令和2年は、1月下旬以降、新型コロナウイルス感染症の拡大が懸念される中で、世界経済の景気後退への警戒感が強まり、長期金利は低下し、マイナス圏で推移した。その一方で、3月には、欧州や米国における感染の深刻化により、金融市場が混乱する中で、ボラティリティの上昇による市場参加者のリスク許容度の低下や株価の大幅な下落に伴う現金化の動き等から、長期金利が急激に上昇する場面も見られた。その後、令和2年度の第2次補正予算を受けた幅広い年限での国債増発の決定を受け、5月から6月にかけて超長期ゾーンを中心にやや金利上昇したものの、7月以降は、増発後の入札が比較的順調な結果であったことや米金利の低下もあり、金利は総じて安定的に推移した。年限別にみると、第1次・第2次補正予算において増発のなかった40年債においては、30年債とのスプレッドがタイト化した一方、第1次・第2次補正予算において大幅に増発した短期国債(1年以下)(注)については、徐々に金利上昇する傾向が見られた。12月に経済対策の策定等に伴い編成された第3次補正予算においては、既に過去最大を大きく上回る規模となっていた国債の更なる市中増発を抑制し、市場への影響を緩和する観点から、財投機関等からの預託金の活用等による財投債の減額や年度間調整分(前倒債)の活用により、カレンダーベース市中発行額(定期的な入札による発行)の増額を回避した。(注) 市場の消化余力等を踏まえつつ、短期国債を第1次補正予算で+15.4兆円、第2次補正予算で+45.5兆円増額した。2.令和3年度国債発行計画の概要令和3年度国債発行計画の策定に当たっては、以上令和3年度 国債発行計画について理財局国債企画課長 柴田 智樹(図1)令和2年度における各年限の金利の推移▲0.4▲0.20.00.20.40.60.8(%)1/12/13/14/15/16/17/18/19/110/111/112/1(出典)日本相互証券(単利)終値ベース(T-Billのみ引け値ベース)令和2年5月27日二次補正後計画公表令和2年4月20日一次補正後計画公表40年債30年債20年債10年債5年債2年債T-Bill(1年) ファイナンス 2021 Feb.27令和3年度予算特集:1特 集

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