ファイナンス 2021年2月号 No.663
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化が行われている*6。また、第2次補正予算では、中長期的に持続可能であるものの、一時的な業績悪化により自己資本が減少して民間からの追加融資が困難となっている事業者を支援するため、政投銀や日本公庫等において資本性劣後ローンが導入されている(6兆円規模)。但し、新型コロナ融資の当初3年間の実質無利子化措置や新型コロナ特例リスケジュールによる支援*7等もあることから、資本性劣後ローンの12月までの貸付実績は2,900億円程度にとどまっている。2.経済対策と令和3年度計画上述のように、新型コロナ融資はほぼ平年の融資額に近い水準まで減少してきている。ただし、昨年12月における令和3年度計画の策定にあたっては、新型コロナ感染症の第3波・第4波の発生や再度の緊急事態宣言の発令も想定する必要があること、年末・年度末の資金需要が急増する可能性があること、民間金融機関による実質無利子化措置の終了による影響等を考慮して、日本公庫等に対して総額約27兆円という十分な金額の財政融資を計上している(資料1)。昨年末以降、新型コロナ感染症の第3波が発生し緊急事態宣言が再度発令されているものの、足元では融資申込件数は特段増えていない。この状況が年度末まで続く場合、令和2年度計画については少なからぬ運用残が発生すると見込まれるが、この運用残は令和3年度の政府系金融機関における融資財源に充てることはできないことに留意されたい。新型コロナ融資はリーマンショック時の融資制度と比較しても異例の措置であり、ゆくゆくは平常化させていかなければならないことは言を俟たない。このため、昨年末の経済対策において、民間を通じた実質無利子・無担保融資は本年3月まで、日本公庫等による同措置は、感染状況や資金繰りの状況を踏まえ、当面本年前半まで継続すること(以後の措置は未定)とされている。*6) 令和2年度の3次にわたる補正予算を通じ、政府系金融機関(日本公庫、沖縄公庫、政投銀、商工中金及び福祉医療機構)に対して、新型コロナ融資と資本性劣後ローンの利下げ財源も含めた財務基盤強化を目的として合計9兆円程度が一般会計に計上されている。*7) 新型コロナの影響を受けて資金繰りに悩む中小企業に対して、中小企業再生支援協議会が特例リスケジュール計画策定の支援を行い、主要債権者の支援姿勢を確認したうえで、既存の借入について最長1年間返済猶予を行うという措置。*8) 設備資金貸付利率特例制度。各貸付制度の基準金利から当初2年間▲0.5%引き下げ。但し、日本公庫等に対する財政融資については、本年前半までの所要金額ではなく、来年3月までの所要金額として上記の通り総額約27兆円を計上している。これは、金利負担の有無・水準にかかわらず、新型コロナ感染症や経済情勢によっては今年度を通じて事業者の資金繰り需要が再び急増する可能性があり、このような事態に即応できる体制を備えるためである。なお、日本公庫等における財務基盤強化については令和2年度補正予算において十分な措置が講じられており、財政融資における償還確実性は十分に担保されている。ポスト・コロナの経済構造に転換するためには、収益性の高い事業構造や産業構造への改革も必要となってくる。このため、日本公庫においては、新事業やビジネスモデルの転換等の生産性向上に資する設備投資について適用金利を引き下げる融資制度を2年度第3次補正予算より措置*8しているが、財政融資はこの財源も手当てしている。26 ファイナンス 2021 Feb.(補論)新型コロナ融資への財政投融資の対応特 集

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