ファイナンス 2021年2月号 No.663
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1. 新型コロナ融資の制度概要と利用実績令和2年2月以降、2度にわたる緊急対応策や補正予算等を通じて、新型コロナ感染症による経済的被害を受けている事業者の資金繰り支援のため、低利での設備資金及び運転資金の供給を目的とするいわゆる「新型コロナ融資制度」を導入・拡充してきた。例えば日本政策金融公庫(以下「日本公庫」と言う)においては、国民生活事業の場合は6千万円、中小企業事業の場合は3億円を上限に*2、当初3年間は基準利率から▲0.9%引き下げた利率*3とし、一定の条件を満たす場合には実質無利子化措置を講じている。更に、新規融資とあわせて既往債務の借換えも可能とし、借換え部分についても金利引き下げを行うこととしている。財投では、この日本公庫、沖縄振興開発金融公庫(以下「沖縄公庫」という)や福祉医療機構における新型コロナ融資の財源として約29兆円の財政投融資を計上するとともに、日本政策投資銀行(以下「政投銀」と言う)や商工組合中央金庫(以下「商工中金」と言う)による中小・中堅・大企業向けのツーステップ・ローンや資本性劣後ローンの財源として21兆円の財政投融資を計上している。このように、2度にわたる補正や弾力追加を通じて総額約50兆円という空前の規模の計画補正を行ったのは、事業者の資金繰り*1) 本稿における意見に渡る部分は筆者個人の見解である。*2) 金利引き下げの上限額は、昨年3月の導入時は国民生活事業3千万円、中小企業事業1億円であったが、昨年7月にそれぞれ4千万円と2億円、本年1月に6千万円と3億円に引き上げられた。*3) 導入時の基準金利と引き下げ後の金利は、国民生活事業:1.36%⇒0.46%、中小企業事業:1.11%⇒0.21%。*4) 日本公庫・沖縄公庫、政投銀・商工中金(危機対応円滑化業務)及び福祉医療機構の合計。*5) 信用保証協会による保証(セーフティネット保証4号・5号及び危機関連保証)付融資。なお、民間金融機関による実質無利子融資は上記28兆円の内数であり、令和2年12月末時点で約17兆円。支援の必要性もさることながら、非常時の備えとして事業者に安心感を持ってもらうことも目的としているからである。運用残(いわゆる使い残し)を発生させないよう必要最低限の金額ギリギリを査定して計上する、通常の財投計画とは異なる観点から計上が行われたのである(資料1)。新型コロナ融資は昨年3月に貸付を開始したが、コロナ感染者数の拡大と緊急事態宣言の発令を受け、日本公庫等の窓口には過去の金融危機時や災害発生時を上回る水準の申し込みが殺到し、処理能力を危ぶむ報道もあった。しかし、他部門からの職員の応援やOB職員の臨時雇用による体制整備、提出書類の簡素化や審査手続きの合理化等により順次対応が図られてきた。また、民間金融機関においても、異例の試みとして、昨年5月より日本公庫等と同様の実質無利子・無担保融資が導入されており(52兆円程度)、事業者による当面の資金ニーズに対しては十分な制度的対応が図られているものと考えられる。新型コロナ融資の実績については、まずストックで見ると、昨年12月末までの融資決定額は政府系*419兆円、民間*528兆円、合計約47兆円となっており、昨年6月以降は民間の融資額が政府系を上回る状態となっている(資料2)。次にフローで見ると、政府系では緊急事態宣言が発令されていた4月から5月にかけて各金融機関でかなりの件数・金額の融資決定が行われたものの、足元では、福祉医療機構以外について(補論)新型コロナ融資への 財政投融資の対応*1理財局計画官 小澤 研也 ファイナンス 2021 Feb.23令和3年度予算特集:1特 集

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