ファイナンス 2021年2月号 No.663
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(3)国際金融都市に向けた税制上の措置日本の金融資本市場を国際金融センターの一つとして発展させ、海外から金融事業者・高度人材を呼び込むため、政府一丸となって取り組むこととしており、税制においても以下の措置を講ずることとする。・法人課税においては、投資運用業を主業とする非上場の非同族会社等の役員に対して支給される業績連動給与について、一定の要件を満たした場合は損金算入を可能とする措置を設ける。・相続税においては、就労等のために日本に居住する外国人に係る相続等について、その居住期間にかかわらず、外国に居住する家族等が相続により取得する国外財産を相続税の課税対象としない。・個人所得課税においては、ファンドマネージャーが運用成果に応じ利益の分配として受け取る「キャリードインタレスト」について、一定の場合には、株式譲渡益等として20%の分離課税の対象となることを法令解釈上明確化する。・国際課税においては、リミテッド・パートナーシップ※を通じて投資を行う非居住者等に対する課税の特例について、持分割合要件を緩和する。※ 無限責任組合員及び有限責任組合員から構成され、共同して投資事業を行う組合(4)住宅ローン控除の特例の延長等住宅ローン減税については、10年間を限度として住宅ローン年末残高の1%を所得税額から控除する仕組みとされていたが、令和元年度税制改正において、令和2年末入居分まで、控除期間を13年間に延長する等の特例が設けられたところ。(注)今般、経済対策の観点から、(1)控除期間13年間の特例を適用できる入居期限を延長し、一定の期間に契約した場合には、令和4年末までに入居した者を対象とするとともに、(2)これまで床面積50m2の住宅が適用対象とされていたが、特例が延長される期間に入居する者のうち合計所得金額1,000万円以下の者については、床面積が40m2以上50m2未満の住宅も適用対象とすることで、新型コロナウイルス感染症の影響等により低迷が続いている住宅投資を幅広い購買層に対し喚起することとした。なお、会計検査院からの指摘を踏まえ、令和3年度与党税制改正大綱において、住宅ローン年末残高の1%を控除する仕組みについて、1%を上限に住宅ローン支払利息額を考慮して控除額を設定するなど、控除額や控除率のあり方を令和4年度税制改正で見直すこととされている。(資料5)また、住宅取得資金に係る贈与税の非課税措置については、令和3年4月から12月末までの間に契約した場合の非課税枠を最大1,500万円まで引き上げるとともに、合計所得金額が1,000万以下の者を対象に、床面積が40m2以上50m2未満である住宅についても適用することとする。(注) 消費税率の8%への引上げ時に、10%への引上げも踏まえた控除額の引上げ等の反動減対策が講じられていたが、令和元年度改正における措置は、これを上乗せするもの。3.デジタル社会の実現(ア)研究開発税制の見直し企業がクラウド環境でサービスを提供するソフトウェアなどは、いわゆる「自社利用ソフトウェア」として取り扱われ、その制作に要した試験研究費は、税務上、資産計上され、研究開発税制の対象外とされてきた。本改正では、ソフトウェア分野における研究開発を支援し、企業のDXを推進する観点から、その資産の取得価額に含まれるものであっても、研究開発費として損金経理をした金額を研究開発税制の対象とすることとする。(イ)押印義務の見直し税務署長等に提出する国税関係書類において、実印及び印鑑証明書を求めている手続き等を除き、押印義務を廃止することとする。なお、税制改正関係法案の施行日前においても、改正の趣旨を踏まえ、当該書類については、運用上、押印がなくとも改めて求めないこととする。(ウ)電子帳簿保存制度の見直し等経済社会のデジタル化を踏まえ、経理の電子化による生産性の向上、テレワークの推進、クラウド会計ソフト等の活用による記帳水準の向上に資するため、国 ファイナンス 2021 Feb.11令和3年度予算特集:1令和3年度税制改正(国税)について 特 集

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