ファイナンス 2021年2月号 No.663
12/92

令和3年度税制改正については、令和2年12月10日に与党において「令和3年度与党税制改正大綱」が決定され、同年12月21日に「令和3年度税制改正の大綱」が閣議決定された。本稿においては、「令和3年度税制改正の大綱」を中心に説明したい。なお、文中意見等にわたる部分は、筆者の個人的見解である。1.令和3年度税制改正の基本的考え方急速な少子高齢化や働き方の多様化、「新たな日常」の構築など、経済社会の構造が大きく変化している中で、税制としても、こうした諸課題へ的確に対応するとともに、デフレ脱却と経済再生を確かなものとしていくことが求められている。令和3年度税制改正においては、ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現を図るため、企業のデジタルフォーメーション(DX)及びカーボンニュートラル(CN)に向けた投資を促進する措置を創設するとともに、こうした投資等を行う企業に対する繰越欠損金の控除上限の特例を設けることとしている。あわせて、中小企業の経営資源の集約化による事業再構築等を促す措置を創設するほか、家計の暮らしと民需を下支えするため、住宅ローン控除の特例の延長等を行うこととしている。具体的な改正内容等は以下のとおりである。2. 令和3年度税制改正における主な措置等(1)産業競争力の強化に係る措置(ア) デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制の創設企業がウィズコロナ・ポストコロナの新たな日常に対応した事業再構築を早急に進めていくためには、レガシーシステムから脱却しつつ、デジタル技術を活用して企業変革(DX)を進めていくことが重要である。この企業の取組みを後押ししていくため、デジタルトランスフォーメーション(DX)の投資促進税制を創設し、他社とのデータ連携等によりデジタル環境を構築し、事業変革を行う場合に税額控除又は特別償却ができることとする。(資料1)(イ) 活発な研究開発を維持するための研究開発税制の見直し企業が研究開発投資を増額させるインセンティブを強化させる観点から、・厳しい経営環境にあっても研究開発投資を増加させる場合に、一般型(旧:総額型)の税額控除上限を引き上げる・控除率の下限の引下げを含め、控除率カーブを見直す・産学官連携の更なる活性化を図り、質の高い研究開発を推進していく観点から、オープンイノベーション型の対象範囲を拡大するとともに、運用改善策を講じる等の見直しを行うこととする。(資料2)令和3年度 税制改正(国税)について前主税局総務課 税制企画室長 藤嶋 正信8 ファイナンス 2021 Feb.特 集

元のページ  ../index.html#12

このブックを見る