ファイナンス 2021年1月号 No.662
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うに思います」という部分、これは全部カットできます。「~です」と言えばいいではないですか。でも、そう言うと、きつい言い方になるかな、という気持ちはわかりますが、この部分をカットできるとシャープに伝わります。原稿があると棒読みになるという人も、これぐらいシャープで短い文章を作って練習しておけば、誰だって棒読みにならずに話せます。文章が短いということは、伝わる話し方をする際に非常に重要なポイントです。まず、聞く人にとって楽に聞ける、そして、話す人にとっても楽に話せる、そして、言葉のインパクトが強くなります。国会答弁は、こうあってほしいと思います。確かに、話した言葉が議事録に残って公開されるから文章として美しいことは必要ですが、せっかくいい内容を話しているのに、と私は歯がゆい思いをしています。4.伝わる声の出し方・話し方(1)出だしは少しゆっくりでは、ここからは「伝わる声の出し方・話し方」についてお話します。最も大切なことは「聞き取ってもらう」ことです。よく「私、滑舌が良くない」とか「声が良くない」という方がいらっしゃいますが、滑舌が悪いという方は、簡単に言うと原付で時速60kmを出してカーブを曲がろうとしているようなものです。原付は30kmで走って初めてハンドリングできます。ですので、口がまわっていないな、と思ったら、少しゆっくり話してください。特に出だしをゆっくり話すだけでかなり聞こえ方が違います。伝わるためには「ちょっとゆっくり話す」ことにしましょう。(2)一言一言はっきり話すそれから、母音・子音を大切にしてください。一言一言明確に話すことです。単語をきちんと言おうとすれば、それで十分伝わります。どうして伝わらないかというと、早く言ってしまいたい、次に言いたいことがある、時間がない、という気持ちになって話してしまうからです。一回一回立ち止まって、ひとつひとつの言葉を相手に届けようとしたら滑舌が悪いことは解決すると私は思っています。相手が聞き取れさえすれば、声や滑舌は良くなくても構いません。人前で話すときに考えるべきことは、自分なりに「ゆっくり、はっきり」、これだけです。(3)聞き手に語り掛ける私は話し方の指導をするときに「聞いている人にボールを投げるイメージで話してください」と言っています。声の方向を意識して、相手に届けようという気持ちで話すことです。このように「聞き手に語りかける」、これが大事です。うまいとか下手だとか、滑舌が良いとか悪いとか、そのようなことを気にする必要はありません。ゆっくり、はっきり、相手に語りかけよう、それを思うだけです。「ゆっくり、はっきり、語りかけ」を意識して話してみてください。(4)聞き取りやすいプロのテクニックア.プロとアマチュアの違いは語尾に現れる次に「メリハリのある話し方」をするにはどうしたらよいのか。ここにアナウンサーの研修で使う例文があります。「緊急の措置をとる必要があると言っています」という文です。みなさん、言ってみてください。実はプロとアマチュアとの違いは語尾に現れます。アマチュアは、文の意味の切れ目、最小単位の文節と言うのですが、文節の切れ目、すなわち「緊急の」の「の」、「措置を」の「を」、「とる」の「る」の音が強くなったり、高く発音したり、音を伸ばしてしまいがちです。これで聞きづらくなります。イ.ポン出しの法則語尾が伸びないようにするにはどうすればよいか。文節の最初の音を軽く「ポン」と出すのです。「緊急の」の「き」、「措置を」の「そ」、「とる」の「と」を軽く「ポン」と高く出す。これをやると、とたんにプロになれます。私はこのやり方を「ポン出しの法則」と名付けています。(5)「情報」という荷物は「手渡し」で話し方で一番ダメなのは「ベルトコンベア式」です。とにかく次のことが言いたいので、どんどん話してしまうのです。相手の都合を考えずに、ただ送っているだけだと聞き手は休まらないですよね。ですから、「ベルトコンベア方式」ではなく、「宅配便方式」でいくことです。つまり、言いたい話があったら、ま ファイナンス 2021 Jan.84上級管理セミナー連載セミナー

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