ファイナンス 2021年1月号 No.662
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(4)オンライン時代にふさわしいスライドを私は企業でプレゼンを指導していますが、最初に直面するのがこれまでのやり方との闘いです。よく顧客から言われるのは「スライドはこれまで使ってきたものがあるので、これでやりたい」というものです。これに対して私は「いやいや、今こそ、オンライン時代にふさわしいスライドを作りましょう!」といつも言っています。では、どういうものがふさわしいのか、逆に考えれば、どういうものがダメなのか。スライドの2大NGがあります。ひとつは「情報量が多すぎる」というものです。公務員の世界では「一枚紙にまとめる」という文化があるそうですね。だから公務員の方が作るスライドには1枚に盛り込む情報量が多くなります。よく読めば、すごくまとまっているけれども、「ご覧いただくとお分かりのように」とはなりません。「よく読んでください」というのが正しい表現でしょうけれど、これを見せられると「どこをしゃべっているのかわからない」ということが起きます。これが二つ目のNGです。情報量の多いスライドを見せられると、聞き手は字を全部追ってしまいます。聞き手が見ている所に合ったコメントをできればいいのですが、聞き手がプレゼン資料の一番上の箇所を読んでいるのに、話し手が真ん中の右下あたりから読み始めると、聞き手の方はついていけません。「手持ち資料としてよくまとまっている資料」と「プレゼンで参加者に理解してもらえる資料」とは違います。理想としては二種類作った方がよいのですが、忙しくてそういうわけにはいかないという方は、せめて視線誘導をしましょう。例えば「いろいろ書いてありますが、今言っておきたいことは、スライドの右下、○○と書いてあるところです。ここからお話しします。」というように、情報量の多い資料を使う場合には視線誘導をしましょう。大切なのは「聞き手を置いてきぼりにしない」ことです。これを意識するだけでも「わかるプレゼン」になります。(5)スライドプレゼンのポイントスライドプレゼンのポイントは5つあります。ア.「スライドはできる限りシンプルに」先程お話ししましたが、なかなか出来ないという事情もわかります。イ.「スライドと話のコメントは同じに」話している内容がスライドのどこに該当するのかだけは明示してください。ウ.「情報が多いときは視線誘導を」どこを話しているのかわからない、ということが一番困ります。エ.「ネタバレに注意!」答えを導くために説明しているのに、同じスライドの一番下に答えが出ている場合があります。そうすると「わかっちゃった!」となり、それ以上話を聞かなくなってしまいます。そこで、できればアニメーションを使ってください。アニメーションで消しておいて、しゃべりと同時にポンとスライド上に現れたら、聞き手の頭に残ります。聞き手は隠しておくから見たくなります。オ.「細かい情報は手持ち資料に記載する」簡単なスライドを作る、細かい内容については手持ち資料として渡す、というのが理想です。それが難しい場合には、せめて「ここは見てください、ここは見なくていいです」ということを教えてあげてください。(6)オンライン・プレゼンのポイントオンラインのプレゼンでは、スライドにさらに工夫が必要になります。「退屈な映像を続けない」ことです。スライドが文字ばかりだとそれだけで読む気がしないので、スライドに変化をつけることが大切です。つまり、スライドを延々と見せるのではなく、写真や動画を随時入れ込む、たまに話す本人の映像に切り替えるなど、少しでも飽きさせないようにすることが大切です。それから、いま何を話しているのか、画面の隅に見出しを表示することも有効です。これを使うだけでも、オンラインで見続けてもらう率は上がります。ここまで工夫をすることは大変だということもわかりますが、ここまで頑張れば、Youtube時代でも生き残ることができるプレゼンができるかもしれません。81 ファイナンス 2021 Jan.連載セミナー

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