ファイナンス 2021年1月号 No.662
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2. 見続けてもらうための構成・ スライド(1)上達するための最短コース話し方が上達するための最短コースは何かというと、面倒でも「録音すること」あるいは「録画すること」です。これをやっている人はいますが、大半の人は自分の声を聴いたとたんに「嫌だ!」と消してしまいます。その気持ちはわかりますが、それを乗り越えて、聞き手の視点で、どこを改善できるのかを知るために録音、録画をやっていただきたいと思います。話したことを文字に書き起こすと、更に上達します。NHKのアナウンサーは、先輩アナウンサーのコメントを全部文字に書き起こして、自分のコメントとどこが違うのかを比較するという作業をします。そうすると、ベテランアナウンサーのコメントには無駄がないということがわかります。若いアナウンサーの多くは、口は回るのですが、無駄な言葉がたくさんあります。今は音声をそのまま字に書き起こしてくれるGoogleドキュメントやSiriなど便利な装置があります。GoogleドキュメントもSiriも優秀すぎて「えーと、あのー」というようなところは自動的にカットしてしまいますが、ご自身で「えーと、あのー」というようなところを補ってみてからコメントを読んでみると、どれだけ自分が無駄なことを話しているのかがわかります。(2)相手が聞きたいことを話すプレゼンのオープニングによくあるのが、長い自己紹介です。「この話し手は何者なのか」という聞き手の気持ちを慮るあまりに「私は何者か」について一所懸命に説明しますが、実は、聞き手はあまり関心がありません。聞き手は「で、何なの?面白い話を早く!」と思っているので、自己紹介はなるべく短くした方が良いでしょう。また、結論を言う前に、プレゼンのテーマについての現状認識を入れることがよくありますが、話すときは、先に結論を言うべきです。プレゼンでは、まず結論を言って聞き手が「おいおい、どういうことだよ?」と思わせてから、「いや、実はこうなのだ」という順番で話していくのです。つまり、レポートの様式と話の様式は順番を逆にした方がいい。面白い話を早くしてください。「自分が話したいことを話す」という意識をまずは捨て「相手が聞きたいことを話す」という意識をもって、話す順番を変えていくだけでかなり違います。(3)最初の5分が勝負!テレビのオープニングでは「早く見たい!」「何か面白いことが起こりそう!」「見たら得しそう!」というテクニックを使っています。バラエティ番組のオープニングでは一番いいところを見せることで、視聴者に「見たい」と思わせないと見てはくれません。このテクニックを使うだけでかなりプレゼンが変わってきます。多くのみなさんは、このようなやり方をしたことがないと思いますが、期待を煽る内容から始めないと、特に動画は見てもらえません。そして、勝負は最初の5分です。ポイントは4つあります。一つ目は「今日のテーマを明確にする」ということです。二つ目は「困りごとを煽る」、三つ目は「ソリューションを提示する」です。相手が思っているテーマを挙げ、煽っておいて、ソリューションを提示する。「煽っておいてソリューション、煽っておいてソリューション」を繰り返すことでプレゼンは生き生きとしてきます。四つ目は「話を聞くと得られるベネフィット」です。話を聞けば、明日からこれが変わる、友達にこういうことが言える、という聞き手にとってのベネフィットを伝えることで聞き手のモチベーションを上げるわけです。このように、最初の5分を全部聞き手のモチベーションを上げるために使いましょう。細かい話はそのあとにします。テレビ番組では、視聴者の興味を掻き立てる見出しを画面の左上や右上に付けて煽っています。見てみたいと思わせられるかどうかに勝負をかけているわけです。話題のドラマでもこのテクニックが使われています。変な表情のところばかり映して、インパクトのあるセリフを出されると、もう見ざるを得ません。興味を掻き立てる見出しを付ける、そして内容が伴っていれば完璧なプレゼンということになります。 ファイナンス 2021 Jan.80上級管理セミナー連載セミナー

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