ファイナンス 2021年1月号 No.662
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過去の「シリーズ日本経済を考える」については、財務総合政策研究所ホームページに掲載しています。http://www.mof.go.jp/pri/research/special_report/index.htmlコロナショックと 教育・経済格差についての考察*1財務総合政策研究所総務研究部財政経済計量分析室研究官髙橋 済財務総合政策研究所総務研究部 財政経済計量分析室前主任研究官高橋 尚吾シリーズ日本経済を考える1081.教育機関の休業に関する現状分析*1新型コロナウイルスの感染拡大は、我々の社会経済に甚大な影響を及ぼしている。通常の、いわゆる経済危機と様相が大きく異なるのは、雇用や所得といった経済的なショックだけではなく、我々の働き方や子供の教育といった、日頃の生活様式にも大きな影響を及ぼしている点である。学校教育を例にとると、2020年2月27日に、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のために、全国の小中高校及び特別支援学校の臨時休校措置が政府から要請された。その後、文部科学省から学校再開・臨時休業に関するガイドラインが公表され*2、休校の継続・学期の再開については各自治体にて判断されることとなった。同省の調査によると、4月上旬の段階で新学期を開始した割合は、小中高校で全体の約4割にとどまった(表1)。中でも、感染が特に拡大した都府県では1割にも満たない状況であった一方、それ以外の道府県では半数以上の学校が再開しており、地域によって差がある点は注目すべきである。その後、各地域の感染状況等を鑑み、学校が随時再開されたが、その在り方も多様であった。表2に示しているように、6月上旬時点でほぼ全ての学校が再開、その半数が全面再開をし*1) 本稿は財務総研スタッフ・レポート『コロナショックと教育・経済格差についての考察』に対し必要に応じて加筆・修正を行ったものである。本稿の内容は全て執筆者の個人的見解であり、財務省あるいは財務総合政策研究所の公式見解を示すものではない。また原レポートの作成にあたって、佐藤栄一郎前総務課長、鎌田泰徳主任研究官、森友理前主任研究官から、大変貴重なご意見を賜った。記して感謝申し上げたい。ありうべき誤りは全て筆者に帰する。*2) 文部科学省「Ⅰ.新型コロナウイルス感染症に対応した学校再開ガイドライン(令和2年3月24日)」https://www.mext.go.jp/content/20200406-mxt_kouhou01-000006156_1.pdf 文部科学省「Ⅱ.新型コロナウイルス感染症に対応した臨時休業の実施に関するガイドライン(令和2年4月17日改訂版)」https://www.mext.go.jp/content/20200417-mxt_kouhou01-000006156_1.pdf*3) 詳細は文部科学省「新型コロナウイルス感染症に関する学校の再開状況について」を参照。https://www.mext.go.jp/content/20200603-mxt_kouhou01-000004520_4.pdfている一方で、残る半数は短縮授業や分散登校という形で再開している状況であったことが分かる。また、図で示していないが、全面再開と時短・分散での再開状況の差異は、やはり地域間で大きく様相を異にしており、感染者の多い地域では全面再開がほぼ0%に近い状況となっていた*3。こうした時短・分散での再開を余儀なくされた学校についても、いずれは全面的な再開へと移行することになるが、こうした学校のうち、特に高等教育では3割近くの教育機関が、6月時点で全面再開が未定の状況であった。表1 4月10日時点の学校再開状況(国公私立学校計)全国うち7都府県それ以外幼稚園59%27%82%小学校33%0%49%中学校33%1%49%義務教育学校45%0%59%高等学校35%2%53%中等教育学校36%5%51%特別支援学校31%0%45%専修学校高等課程45%27%65%合計38%6%55%(出所)文部科学省資料から筆者作成。詳細は文部科学省「(参考)学校の新学期開始状況等について」を参照。https://www.mext.go.jp/content/20200413-mxt_kouhou01-000006421_1.pdf(注)7都府県とは、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県、福岡県を指す。67 ファイナンス 2021 Jan.連載日本経済を 考える

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