ファイナンス 2021年1月号 No.662
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確保等にあわせ、当初予算においても感染症危機管理体制や保健所体制の整備等を行うことで感染拡大防止に万全を期すとともに、予期せぬ状況変化への備えとして、5兆円のコロナ予備費を措置することとしております。また、中長期的な課題にもしっかり対応するため、デジタル社会の実現に向けて、本年9月にデジタル庁を設置して政府全体の情報システムを戦略的に管理するとともに、グリーン社会を実現するため、補正予算での措置も合わせ、再エネ・省エネやカーボンニュートラルに向けた研究開発を支援していくこととしております。新型コロナウイルス感染症が歳入面、歳出面双方に影響を及ぼす中、足下の財政が悪化しているという事実は、しっかりと認識しておかなければなりません。その上で、感染拡大防止・経済再生・財政健全化のバランスをとっていくために、今回の補正予算と当初予算を編成したところであり、本年の国民の皆様の生活を支え、日本経済全体を良くしていくためにも、これらの予算の早期成立を図ってまいります。令和3年度財政投融資計画は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた企業・事業者及び地方公共団体を強力に支援し、イノベーションの大胆な加速と事業再生・構造転換を進め、低金利を活用した、生産性向上や防災・減災、国土強靱化等に資するインフラ整備を加速するため、過去最大規模の約40.9兆円としております。令和3年度税制改正は、ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現を図るため、企業のデジタルトランスフォーメーションやカーボンニュートラルに向けた投資を促進する措置を創設するとともに、こうした投資等を行う企業に対する繰越欠損金の控除上限の特例を設けることとしております。また、中小企業の経営資源の集約化による事業再構築等を促す措置を創設することとしております。加えて、家計の暮らしと民需を下支えするため、住宅ローン控除の特例の延長等を行うこととしております。令和3年度国債発行総額は、令和2年度補正予算で大幅に増発した短期国債が償還・借換を迎えることもあり、過去に類のない規模となっております。このような中で、定期的な入札による市中発行額は、短期国債の減額等により、補正増発後の平年度化ベースから減額しております。今回の危機を乗り越え、次の世代に未来をつないでいくことは、我々に課せられた責任です。また、困難な時だからこそ、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止だけではなく、日本が抱えている構造的な課題にも、着実に取り組んでいかなければなりません。その中でも、最も差し迫った課題の一つが少子高齢化です。平均寿命の伸びを背景に高齢者の人口が戦後から急速に増える一方、出生数は急減し、現役世代が減少しています。こうした中で、国民皆保険制度が創設された1958年には、65歳以上の高齢者1人を現役世代12人で支える構図でしたが、現在では高齢者1人を2人で支える構図となっています。2022年からは、団塊世代が75歳以上の後期高齢者になり始め、社会保障関係費が急増することが見込まれています。こうした中で、昨年末の全世代型社会保障検討会議において、後期高齢者の窓口負担割合の見直しについて結論を得たことは、現役世代の負担軽減の観点からも大きく評価できると考えています。引き続き、社会保障を持続可能なものにするため、不断の改革を続けてまいります。また、エネルギー問題も、大きな課題です。日本のエネルギー供給は、海外由来の化石燃料に依存しており、これは、地球温暖化とエネルギー安全保障の双方の観点から問題です。こうした中で、昨年10月に、菅総理大臣は、2050年カーボンニュートラル(脱炭素社会の実現)を宣言しました。2050年カーボンニュートラルについては、革新的な技術開発やビジネスモデルの転換が必要な分野も多くあることから、実現を困難に思うかもしれません。しかしながら、日本はかつて、抱えていた深刻な大気汚染問題を、世界で最も厳しい排ガス規制基準を導入することで克服してきました。私は、日本の技術力と勤勉性をもってすれば、不可能ではないと考えていま ファイナンス 2021 Jan.2

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