は知っていましたが)、年次という概念がほぼない点。「能力あると評価されればFast Streamじゃなくてもどんどん偉くなるし、能力がないと思われればFast Streamでも偉くならない。」、「自分でキャリアをつくっていくのは非常にシビアな面もあるが、やりたいこと・行きたい方向に進める」ということを複数の公務員から聞きました。国際機関のように空席補充の公募を経てキャリアアップしていく仕組みには醍醐味がある一方で、色々な職種がやってみたい等、まだ確たる自分のやりたい分野を定めておらず、日本におけるジェネラリスト・総合職のような動き方を求める人には厳しい環境と言えるかもしれません。(2)若い幹部、多様な出身調べてみると事務次官がとても若いです。年次の概念がないなと感じます。●英国政府の事務次官の年齢(2020年11月現在)*19内閣府事務次官:52歳財務省事務次官:51歳外務・開発省事務次官:57歳内務省事務次官:52歳国防省事務次官:53歳ビジネス・エネルギー・産業戦略省事務次官:38歳環境・食糧・農村省事務次官:53歳国際貿易省事務次官:46歳運輸省事務次官:56歳雇用年金省事務次官:51歳保健社会省事務次官:52歳住宅・コミュニティ・自治省事務次官:47歳北アイルランド省事務次官:55歳あと、財務省の組織図を作っていて気がついたのですが、とても1ポストが長い。そして事務次官手前のDirector General(総局長級)の主要な4人のうち2人は他省庁出身、1人は民間出身だったりと幹部でも多様なことにもなかなか驚きました。女性も多い。*19) 政府サイトのほか講演時の略歴、Linkedinなどを駆使して、大学卒業年などから推計しているものも含む。極端に若い人というのは、公開プロフィールを直近3ポストまでとか、直近20年までとか、絞り込んでいて精緻に出しておらず、あまり見くびられないように気をつけている傾向もあるのだとか。*20) http://www.women.co.jp/conf/speakers/detail-e-braddick_katharine_.html*21) https://www.linkedin.com/in/beth-russell-66a17a7b/?originalSubdomain=uk*22) https://www.gov.uk/government/people/cat-little*23) https://data.gov.uk/dataset/a5ffd07c-e31e-47c8-b343-1bcd9b5e3fe1/organogram-of-staff-roles-salaries/datafile/bb6232db-2fdc-46ee-9e8e-22e32f238699/preview・トム・スカラー財務事務次官は現職を約7年、その前は副財務次官を約5年、国際金融審議官1年、首相秘書官1年、ワシントン6年(IMF・駐米英大)など。・チャールズ・ロックスボー副財務次官は現職で約4年、その前は金融局長を約3年・キャサリン・ブラディック金融局長*20は現職で約6年、その前はイングランド銀行内の健全性監督機構:PRAでプルデンシャル政策担当Directorを2年、その前は金融行為規制機構:FCAで11年(環境省出身、英国保険協会を経て2001年にFCAへ)。・マーク・ボウマン国際局長は現職を約7年、その前は国際開発省の人道・安全保障・紛争・国際金融担当局長を約2年(財務省出身)。・ベス・ラッセル税厚生局長*21は現職を3年、その前は、所得税・年金課長4年、財務大臣秘書官2年(雇用年金省出身)・キャット・リトル予算局長*22は、現職は着任したばかり、その前は国防省の総合財政Director 3年、法務省の財政パフォーマンスDirector 4年(大手会計事務所PwCの出身、2013年に英政府へ)公表ベースでその待遇は、財務事務次官は年185,000ポンド、副財務次官は155,000ポンド、他局長が130,000ポンドほどと*23公表されているものの、少なくとも最近の人事では、金融局長経験が副財務次官・財務次官への流れになっているように見えるのもまた興味深い。前述のシンクタンクの人いわく、こうした幹部ポストも英国国家公務員内外への公募となってはいますが、次官や副次官になるにはその前の局長級の経験が必要、局長になるにはその前の課長級以上の経験が必要となるため、あまりシニアな幹部で突然外部から公務まったくの未経験者が来ることはさすがにあまりないのだそう。リボルビングドア(回転扉)のような英国公務員の世界ですが、様々な方の経歴を見聞きする中で、補佐級から課長手前までが実質的に出入りがおきるところの上限なのかなとも思います。49 ファイナンス 2021 Jan.連載海外 ウォッチャー
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