ファイナンス 2021年1月号 No.662
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ちんと対話してよい水準を作るのはどの国でもしていることと思うものの、個人的には一層の好感触でした。(3)シェアエコVAT課税12月9日、英国財務省がシェアリング・エコノミーに関するVAT(付加価値税)の課税上の課題について、Public Consultationを開始*17しました。これも実に柔軟なパブコメです。今回、英政府の考える主要5分野(Uberの提供する旅客運送やAirBnBの提供する短期宿泊滞在ほか)の事業規模拡大に伴い、付加価値税(VAT)の課税ベースが侵食され、競合となる従来型の事業者(タクシーやホテル業界ほか)との競争条件が歪められ、海外に本拠を置くデジタル・プラットフォーム・サービスの提供者が国内の同様の事業者に比して非合理的に競争上有利になる、と問題意識を背景に行われるものです。質問項目が、政府推計以外の市場規模や、政府が見落としているビジネスモデルや売上げ規模の階層について実態を尋ねる形式でわかりやすく、回答期限は2021年3月3日まで、まさに英国の事業者の意見を取り込もうという意欲が伺えます。4. 【“官民の回転扉キャリア”、“若い幹部”、“98%遠隔”英国公務員の世界】(1)官民の回転扉キャリアここ2年半の中で、私のカウンターパートとなる英国財務省の日本アジアを見る担当(Policy Adviser,Global Economics)は3世代目に代わっています。一世代目はオックスブリッジ卒で新卒すぐ、1年ほどで金融部局に別のポストを見つけて異動。2世代目は二人、英国のある地域大学を出てGap yearとして商工会議所/国際NGOでインターン後に新卒入省、彼らも金融部局に別のポストを見つけて異動、現在の3世代目の担当とは新型コロナ下での交代だったので仕事はお願いしつつもまだ会えていない状況。(コロナ前までは積極的に、当方主催レセプション機会(日本を知ってもらう場)を作って、招待して近況交換をしていました。)*17) 出所:https://www.gov.uk/government/publications/vat-and-the-sharing-economy-call-for-evidence?utm_source=a8c2ef20-3888-4167-b36b-459035cee4b1&utm_medium=email&utm_campaign=govuk-notications&utm_content=immediate*18) https://www.hmtreasurycareers.co.uk/rewards-benets/英国財務省は、日本の財務省と似ていて、本省が1300名程度の定員、新卒FastStream採用で毎年20~30人前後入っているようです。応募の前提は新卒も経験者も、英国かEEA欧州経済領域か英国のコモンウェルスの国籍保持者で大卒以上、あとは個別のJob Descriptionsによります。Policy Advisor(日本の係員/係長級のイメージ)として入って、初任給は年28,500ポンド(約395万円)、1年半後に評価が満足いく水準であれば年32,320ポンド(約448万円)、3年後には37,900ポンド(約526万円)という昇級イメージ*18を提示しています。しかしながら近年、公務員人気の低下傾向もあるというところまで日本と似ています。よいUnder Graduateをよい成績で出て入るのが大勢で、オックスブリッジ卒が多くを占めていたのですが、いまは新卒のFastStream採用でも経験者採用でも幹部においても非オックスブリッジ卒が増えていると(財務省や内閣府のみならずイングランド銀行でも)聞くところ。英国でシンクタンクに転じた国家公務員から、英国公務はますます優秀な人材を獲得できなくなっている原因について尋ねてみると、「何より給与の問題がある」とのことです。現在、Fast Streamで英国公務に入った場合、初年度の年収は3万2千ポンド程度であるが、商法を専門とする弁護士であれば5万ポンドを超える。また、この給与差は、最終ポストでさらに圧倒的な違いとなる。現在、事務次官の年収は16万ポンド程度(約2233万円)だが、民間企業のトップはこの10倍どころではない給与をもらっている。近年、この官民の格差がどんどん広がっている、このため、例えば、デジタルや金融といった分野で専門人材を国家公務員として採用しようと思っても、意中の人材は、その上司となる国家公務員の何倍も民間で稼いでおり、生活水準が異なるため、そもそも勧誘するためにランチに誘うことすら難しくなりかねないという状況があるのだそうです。日本と決定的に異なるのは、(終身雇用ではないの ファイナンス 2021 Jan.48海外ウォッチャーFOREIGN WATCHER連載海外 ウォッチャー

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