ファイナンス 2021年1月号 No.662
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供についてはどう考えらえられますか。多胡 コロナ禍ではゼロゼロ融資等、国の手厚い支援が出ていますが、本来は銀行の資本のバッファーでやるべき話です。国の金融支援は手厚すぎる印象ですが、国が支援を絞っても、本来支援すべき銀行が役割を果たさないため、国が支援しないと企業が倒産してしまうという議論は理解できます。コロナ以前から、政府系金融機関の役割は民間次第であり、従属的に決まると言えます。まずは民間金融機関が果たすべき役割を果たしているかどうかという問題があり、果たしていないのであれば、政府系金融機関がやらざるをえないということになります。今の民間金融機関に資本性ローンを出す余力は正直ありません。この点、政府系金融機関が出すことは良いことだと思います。他方で、誰がフォローアップするのかというのが課題です。政府系機関の一部は、決済口座を持たないため、フォローアップが困難です。この場合には、日々のトランザクションを追いかけることができる民間金融機関との協力が不可欠ですので、フォローアップをする意思のある民間機関と組むことが必要です。―地銀に経営者を中心とする人材紹介を担わせようという議論についてはどのように考えられますか。多胡 金融支援だけでは解決しないことはあり、最後は経営人材を送りこまなければならない事態になることはありえます。人材紹介は地銀にとって必須のビジネスになるものと考えています。金融庁の規制緩和も評価します。他方で、現実には経営者クラスではなくスタッフレベルの紹介にとどまっていることが多く、今後経営者層にどうするのかは課題として残っていると思います。―本日は、多岐にわたり、大変貴重なお話を拝聴させて頂き、誠に有難うございました。(この勉強会は、令和2年10月26日に行いました。有志メンバーは川本・足立です。)2森俊彦先生(一般社団法人 日本金融人材育成協会 会長)プロフィール1979年東京大学経済学部卒業、同年日本銀行入行。シカゴ大学大学院留学(経済学修士)、ニューヨーク事務所次長、信用機構局参事役(バーゼル銀行監督委員会・日本代表)、金沢支店長、金融機構局審議役、金融高度化センター長などを経て現在に至る。金融庁参与、商工中金アドバイザー、中小機構中小企業応援士のほか、経済産業省・内閣府・環境省・金融庁の有識者会議のメンバーも務める。―森先生は、金融仲介機能の発揮を通じた「共通価値」の創造に向けて、貸し手の金融機関のみならず、借り手である中小企業経営者や、監督当局サイドを含めた「金融人材」の育成に取り組まれています。財務局の現場職員に対しても、例年、研修講師としてご指導いただいておりまして、厚く御礼申し上げます。11月に発刊された『地域金融の未来』も拝読しました。金融機関にとって「ミドルリスク先以下の借り手こそが、ブルーオーシャン」とのメッセージが印象に残りました。コロナの状況を踏まえて、地域金融機関が「ブルーオーシャン」で力を発揮するにはどのような取り組みをすべきか、ご意見をいただけないかと考えています。森 私は全国の中小企業の稼ぐ力を、金融面からいかに引き出すかということをやっています。雇用の7割を中小企業が担っていることからも、中小企業の活性化が日本の明るい未来を創るために重要であることは ファイナンス 2021 Jan.26財務省再生プロジェクト 部局横断的勉強会(1)SPOT

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