ファイナンス 2021年1月号 No.662
28/100

財務省では、常に国民の視点に立って、高い価値を国民に提供できる組織風土をつくり上げていくため、「財務省再生プロジェクト」を進めています。その一環として、部局横断的な議論の活性化や職員の政策立案能力の向上を図るため、若手補佐を中心とした有志勉強会を開催しており、今事務年度は「コロナ後の様々な政策課題」をテーマとして活動しています。コロナの拡大は、日本各地の地域経済に深刻な影響を及ぼしています。今回は、有志メンバーで、地域経済を支えるファイナンス機能のあり方について、2名の有識者と意見交換させていただいた模様をご紹介します。1多胡秀人先生(地域の魅力研究所代表理事)プロフィール1974年、一橋大学商学部卒業後、東京銀行に入行。外資系銀行、コンサルティング会社を経て、現在に至る。金融庁参与、商工組合中央金庫、山陰合同銀行の社外取締役も務める。著書に『地域発! 日本再生』、『地域金融ビッグバン』、『地域金融 最後の戦い』、『地域金融リテール新戦略』など。―日本の各地域は、人口減少が継続する中、コロナ禍で急激な需要減少に見舞われています。地域経済を支えるファイナンス機能の充実は重要な論点です。多胡先生は、事業者の業況が悪くなっても「逃げない姿勢」、特に「リレーショナルシップ・バンキング」(リレバン)の重要性について、様々な場面で訴えていらっしゃいます。先日も財務局(岡山財務事務所)主催のセミナーにご登壇いただき、ありがとうございました。今日はまず、コロナ下でのリレバンの現状について概括的に伺えればと思います。多胡 コロナとDXで、リレバン以外の銀行の機能の淘汰は加速すると思います。DXが拡大すると、異業種やネット系の新たな金融機関が決済業務やマスの個人向けの業務を席捲します。定量的なデータに基づく判断を、大量・低コストで処理することは、DXの真骨頂です。既存の金融機関は新興勢力に対して、コスト構造からとても太刀打ちできません。初のネット専業銀行が誕生して既に20年近くが経ちますが、いまだリレバンの分野に参入してこないのは、非対面に終始したデジタルではトランザクション・バンキングはできてもリレバンは困難なためです(図1)。地域金融機関にとっての持続可能なビジネスモデルは、参入障壁が存在しているリレバン以外に選択肢はありません。我々は「レイジーバンク」と呼んでいますが、地域金融機関の中には、「雨の日に傘を取り上げる」、業況が悪化した際に融資を引き揚げるようなところがあります。短期的には収益が上がりますが、収益基盤が毀損してしまいます。長期的な視点があればそのようなことはしないはずですが、現実にはリレバンが広く浸透したとは言えません。業況悪化に苦しむ地域企業財務省再生プロジェクト 部局横断的勉強会(1)「地域を支えるファイナンスとは?」編大臣官房地方課総務室長 川本 敦/大臣官房秘書課財務官室課長補佐 足立 直也関税局関税課課長補佐 神代 康幸23 ファイナンス 2021 Jan.SPOT

元のページ  ../index.html#28

このブックを見る