ファイナンス 2021年1月号 No.662
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令和3年度予算の編成等に関する建議(概要)令和2年11月25日財政制度等審議会・危機的な財政状況にある我が国は、新型コロナ感染拡大防止、経済回復に加え財政健全化という三兎を追い、そのいずれも実現しなければならないという厳しい戦いを強いられる。・新型コロナ対応については、引き続き万全を期す必要がある。その上で、感染状況や経済の動向も十分に踏まえつつ、社会経済活動のレベルが上がる中で、単なる給付金や一律のつなぎ的措置から、ウィズコロナ・ポストコロナを見据えた経済の構造変化への対応や生産性の向上に前向きに取り組む主体の支援へと軸足を移していき、未来に向けた日本経済の成長力の強化につなげていくべき。・今後の日本経済を考える上で、労働生産性を高める努力が不可欠。デジタル化・DXや設備投資の推進、価値に見合う価格設定による労働生産性・賃金の上昇、産業構造への転換等に向け、規制・制度改革や企業慣行の見直し等も必要であり、財政支出を増やせば持続的な経済成長が起きるといった単純な話ではない。財政支出が必要な場合には、効果的・効率的な支出となるよう、選択と集中・ワイズスペンディングの考え方を徹底すべき。・社会保障制度の受益と負担のアンバランス、国債発行を取り巻く現状、危機管理としての財政健全化の重要性に鑑みれば、2025年度のPB黒字化目標に向け、これまでの歳出改革の取組を着実に進めていく必要。特に社会保障制度の持続可能性を高め、将来に不安を感じている現役世代が希望を持てるようにしていくことで、消費の促進にもつながる。・令和3年度予算では、生産性の向上、人口減少・少子高齢化への対応、行政のデジタル化・DXや省庁等の垣根を超えた連携という3つの観点に立ち、新経済・財政再生計画の歳出改革の「目安」等に沿った予算編成を行うべき。総論・団塊の世代が後期高齢者となる2022年を見据え、給付は高齢者中心・負担は現役世代中心となっている患者負担の仕組みを見直すべき。後期高齢者の自己負担については、可能な限り広範囲で8割給付(2割負担)を導入し、現役世代の拠出金負担を軽減すべき。・2021年度は毎年薬価改定の初年度であり、全品改定を実施することとし、初年度にふさわしい改定を実現すべき。・都道府県医療費適正化計画の見直し、国保の都道府県単位化の趣旨の徹底(国保の法定外繰入の解消、保険料水準の統一など)や、デジタル化・DXの推進により、医療へのガバナンスを強化すべき。・医療扶助について、頻回受診や長期入院への対策を行い、デジタル化・DXや被保護者の国保等加入の検討等の改革を進めるべき。・介護報酬改定について、新型コロナが国民生活にもたらしている影響に鑑みれば、通常の高齢化等の要因による国民負担増に加え、プラス改定により更なる国民負担増を生じさせる環境にはなく、国民負担を抑制するよう改定率を決定すべき。・障害報酬改定について、事業者の収支状況等を踏まえた報酬水準の適正化を徹底すべき。1.社会保障医療介護障害福祉雇用・受益(給付)と負担の不均衡を是正し、制度の持続可能性を確保するための改革が急務。社会保障関係費について実質的な増加を高齢化による増加分に相当する伸びにおさめるとの歳出規律に沿った予算編成を行うことはもとより、給付の在り方を見直す制度改革が必要。子供・子育て・真に子供や子育て世代のためになる支援に重点化し、安定財源を確保しながら必要な施策を検討すべき。・児童手当制度に関し、所得制限を超える者への特例給付を廃止するとともに、世帯合算の所得に基づき支給を判断する仕組みに変更すべき。・雇用調整助成金の特例は、経済活動の自律的で円滑な回復を図る観点から、雇用情勢が大きく悪化しない限り、できる限り早期に段階的に縮減・廃止すべき。21 ファイナンス 2021 Jan.SPOT

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