ファイナンス 2020年12月号 No.661
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1はじめに合同宿舎駒場住宅跡地は、京王井の頭線渋谷駅から二駅、駒場東大前駅の目の前に位置する10,071.61m2の大規模な財産で、周囲は閑静な住宅街となっており、近くには地元の商店街や東京大学駒場地区キャンパス他多くの学校が点在する非常に落ち着いた街の中に所在しています。戦前、樹林や畑が広がっていたこの一帯を、昭和14年に旧陸軍省が買収し、指揮小隊の訓練や中隊教練が行われていた駒場練兵場の一部で、戦後、大蔵省へ所管換され、昭和29年に戸建の国家公務員宿舎30棟が整備されました。その後、昭和44年から45年にかけて、RC構造3階の建物6棟からなる宿舎の整備がなされ、多くの職員とその家族の暮らす合同宿舎駒場住宅が存在しておりました。2留保財産としてしかし、この宿舎も、宿舎削減計画に基づいて廃止されることとなり、平成26年5月に国家公務員宿舎としての役目を終えることになります。駒場の街の賑わいや活力を形成する一つの拠点でもあった宿舎がなくなり、今後、本財産を国がどう活用あるいは処分していくかについては、住民の関心も非常に高く、目黒区としても、街の発展や様々な行政課題に対応できる可能性を持った貴重な財産であるとして、平成29年5月、目黒区から東京財務事務所に対して、本財産の活用の検討に向けた要望書の提出がなされました。これら地域からの声を踏まえ、東京財務事務所としても、本財産が有効に活用されることが地域への貢献に繋がるとして、平成30年7月、目黒区と東京財務事務所において「国公有財産の情報連絡会」を設置し、本財産の今後の利活用の可能性について検討を始めました。こういった動きに並行して、国有財産行政にも大きな動きがあり、令和元年6月の財政制度等審議会の答申を受けて、未利用国有地等の管理処分方針の通達が改正され、「有用性が高く希少な国有地については、将来世代における地域・社会のニーズに対応する観点から、国が所有権を留保し、活用を図ること」とされました。本財産はまさに、これに合致する財産として、令和元年12月の国有財産関東地方審議会に諮問した上で、いわゆる「留保財産」として選定が行われ、国が所有権を留保しつつ、定期借地権による貸付けを前提として、本財産の最適利用を図るための利用方針を策定していくこととなりました。本財産俯瞰図↑↓駒場東大前駅(西口)南側北側(3階建)<現状の建物、道路との高低差>1号棟道路道路公衆便所↑||↓6号棟5号棟4号棟3号棟2号棟4m以上1.5m以上本財産側面図合同宿舎駒場住宅跡地の活用関東財務局東京財務事務所 第8統括国有財産管理官国有財産管理官藤原 人詩東京都88 ファイナンス 2020 Dec.連載各地の話題

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