ファイナンス 2020年12月号 No.661
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財務総合政策研究所Ministry of Finance, Policy Research Institute1.はじめに:防災肌付銭ご紹介いただきました山村です。本日は「組織の実践的防災・危機管理~リーダーはどう対応すべきか~」と題してお話をさせていただきます。私は9年半前の東日本大震災のときには、大阪の堺で講演をしておりました。講演を中止し、すぐに東京に向かおうとしたのですが、空港は閉鎖され、新幹線も止まってしまい、仕方がないので、タクシーで11時間半かけて八王子経由でお台場のテレビ局に入りました。タクシー代は16万8千円でした。いざというとき、現金は必要です。今、キャッシュレス時代と言いますが、発災時に現金があるかないかで随分心持ちが変わります。昔の侍は、旅に出るときには、万一の場合に備えて、最低限度の金を帯や下着に縫い込んで旅に出たと言われています。それを昔の人は「肌付銭(はだつけぜに)」と呼んだそうです。私は、個人でも組織でも、最低限の「防災肌付銭」は必要だと思っています。2. パンデミックとクライシス・マネジメント(1)新型コロナウイルスの動向現在、新型コロナウイルスの感染者数や新規感染者数は、徐々に少なくなってきていて第2波がほぼ収束に近いように思われますが、これで終わらず第3波が発生する可能性が高いと思います。世界の感染者数はというと、全体として減ってきていません。特に欧米では、右肩上がりが続いており、予断を許さない状況だという感じを受けています。展開予想は、いろいろあります。消長を繰り返しながら年内にはほぼ終息するだろうという説、長期化するも医療崩壊しないので季節性インフルエンザ扱いになるだろうという説、いわば、共存していきましょうという感じですね。あるいは、第3波が発生して移動や業務等の自粛が再要請されるという説。あるいは、強毒性に変異して死亡率が急増、長期の緊急事態宣言が発出されるだろうという説。あるいは、第3波発生中に首都直下地震とか南海トラフ巨大地震が起こるという説。なお、スペインかぜの場合には、1波、2波、3波とあり、終息までに約3年かかっています。新型コロナウイルスで問題になるのは財政です。税収が一気に減りつつあるわけです。そして歳出はぐっと伸びていくという状態ですから、国の一般会計の歳入歳出の見通しはかなり厳しい状況です。国だけでなく共同通信のアンケート調査では、自治体の88%が、財政悪化が見込まれるという回答をしています。ただ、これもまだまだ見込みが甘いように思います。(2)「現実を受け入れたくない症候群」リーダーにとって、意外と陥りやすい落とし穴についてお話しします。リーダーのクライシス・マネジメント、日本では一般的にリスク・マネジメントと言われますが、災害発生後の対応はクライシス・マネジメントと言います。リスク・マネジメントは、どちらかというと事前対策であって、リスクを想定して、そのリスクにどう対応するのかということです。災害等が発生しリーダーがクライシス・マネジメントを担うと令和2年9月28日(月)開催山村 武彦 氏(防災システム研究所 所長)「組織の実践的防災・危機管理~リーダーはどう対応すべきか~」演題講師上級管理 セミナー76 ファイナンス 2020 Dec.連載セミナー

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