ファイナンス 2020年12月号 No.661
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酒類の産地と繋がりを明確にし「地域ブランド」として付加価値を向上灘五郷の産地である兵庫県神戸市灘区、東灘区、芦屋市及び西宮市は、冬季に「六甲おろし」が吹き降りる地形で、寒造りに極めて適した気候をもたらしている。また、この地域の地層を通って湧き出る地下水は、酵母の増殖に必要なミネラル分を適度に含み、酒造りに適した硬水となっている。この地下水を仕込み水として醸造することで、味わいの要素の調和がとれ、後味の切れの良い酒質が形成されてきた。特に、寒造りした酒を春から夏にかけて貯蔵したものは、香味が整いまろやかさのある酒質になることから「秋上がりする酒」と呼ばれる。その中でも加熱処理することなく出荷するものを「ひやおろし」といい、灘五郷では伝統的に9月に出荷が解禁される。また、イベントも積極的に行っている。灘五郷酒造組合は、令和2年11月28日に「灘の酒YouTube生配信」&「灘の酒オンライン酒場を楽しもう!」の2部構成で「灘の酒 meets ONLINE」を開催した。灘五郷は、西郷、御影郷、魚崎郷、西宮郷、今津郷の5つの地域からなる日本を代表する酒どころ。室町時代にはすでに酒造が始まっていたとの記録がある。18世紀以降には、江戸向けの銘醸地として発展した。その要因の一つに西宮に樽廻船問屋ができて輸送体制が着実に強化されたこともある。江戸へ輸送する際には海路を使った樽廻船で運ぶことができ、陸地からの輸送よりも早く大量に出荷することができた。また、その際に樽の杉香が清酒に移り、熟成されることにより酒質も向上。「灘の酒」は江戸での人気を得て、江戸後期には江戸の酒の需要の8割を供給したと言われている。提供元 灘五郷酒造組合令和2年9月5日に開催された「ひやおろし」の解禁記念イベント1官民・地域一体となった取組を続ける「灘五郷」清酒お酒の地理的表示の活用4 ファイナンス 2020 Dec.

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