ファイナンス 2020年12月号 No.661
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4.2 コンベクシティの実際の計算方法*10本文ではコンベクシティはC=1P d2Pdr2と定義しました。実際の計算に当たっては、0.01%金利が変化したときの価格変化に基づく近似式を利用することが少なくありません。まず、ここでP(r+0.01%)は金利が0.01%上がった時の価格であり、P(r-0.01%)は金利が0.01%下がった時の価格とすると、コンベクシティは下記のような形で記載することができます。C=d2Pdr2≃dP(r)/dr-dP(r-0.01%)/dr0.01%(3)また、dP(r)dr≃P(r+0.01%)-P(r)0.01%と近似できますし、dP(r-0.01%)dr≃P(r)-P(r-0.01%)0.01%と近似できますから、(3)から下記のように記載できます(0.01%は10-4である点に注意してください。)。C≃1P(r)[P(r+0.01%)-P(r)(0.01%)2-P(r)-P(r-0.01%)(0.01%)2]=1P(r)[P(r+0.01%)+P(r-0.01%)-2P(r)(0.01%)2]=100,000,000P(r)[P(r+0.01%)+P(r-0.01%)-2P(r)](4)したがって、P(r)、P(r+0.01%)、P(r-0.01%)の値が得られれば、近似的にコンベクシティの値が得られます。もっとも、例えば、国債のコンベクシティについてBloombergの機能では下記の(5)式のように、(4)式の1100の値が用いられています。1,000,000P(r)[P(r+0.01%)+P(r-0.01%)-2P(r)](5)これは本稿のように1%を0.01と表示するのではなく、1%を1として定義しているためと想像されます。本稿では、金利変動がx%のときの債券価格の変化率は-D(x100)+12C(x100)2={-Dx+12(C100)x2}[%]と考えていますが、Bloombergでは金利変動がx%のときの債券価格の変化率を{-Dx+12Cx2}[%]*10) この節を作成するにあたり、財務総合政策研究所客員研究員の石田良氏のサポートを得ました。記して感謝申し上げます。*11) Bloombergのマニュアルでもこのような表記がなされています。*12) この節を作成するにあたり、財務総合政策研究所客員研究員の石田良氏のサポートを得ました。記して感謝申し上げます。*13) タックマン(2012)では半年に1度クーポンを支払い、満期に100支払うキャッシュ・フローを考えています。と考えていると思われます(後者の定義によるコンベクシティは前者の定義によるコンベクシティの1100の値になります)。したがって、実際のコンベクシティの値を参照するにあたり、Bloombergなどのベンダーを使う場合、コンベクシティの定義に注意する必要があります。なお、実務ではP(r+0.01%):=P+、P(r-0.01%):=P-として下記のように整理した記載がなされることも少なくありません*11。1P[(P++P-)-2P]×1,000,0004.3 債券及び年金とコンベクシティの関係*12タックマン(2012)を参照して、時間をt、満期をT、途中のキャッシュ・フローをC、満期のキャッシュ・フローをFとすれば、一般的にコンベクシティを定義すると下記のように記載できます*13。C=1(1+r)2 [∑Tt=1C(1+r)t×t×(t+1)+F(1+r)T×T×(T+1)]P(6)ここで式(6)の見通しをよくするため、r≃0で近似すればC=1P(C∑Tt=1t(t+1)+FT(T+1))(7)となります(式(7)では式(6)からrがドロップされている点に注意してください)。ここで、2年後に300償還される債券と1,2,3年後にそれぞれ100償還される債券を考えます。金利がゼロとすれば(つまり、r≃0で近似すれば)、前者は2年後に償還されるのでデュレーションは2ですし、後者の平均回収期間は2年ですので、どちらのデュレーションも2です。また、金利をゼロとすれば、どちらの債券価格Pも一緒です。上の公式に従えば、前者のコンベクシティは1P(30074 ファイナンス 2020 Dec.連載日本経済を 考える

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