ファイナンス 2020年12月号 No.661
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4.数式を使ったコンベクシティの説明4.1 デュレーションとコンベクシティの関係コンベクシティとテイラー展開デュレーションとコンベクシティについては、債券価格に対してrについてテイラー展開による2次近似をすることでその関係を表現できます。ここで債券価格P(r)について、金利rの周りでテイラー展開すると下記の近似式が導出できます。P(r+∆r)≃P(r)+dPdr∆r+12 d2Pdr2(∆r)2この式をP(r+∆r)-P(r)=∆P≃dPdr∆r+12 d2Pdr2(∆r)2と変形し、これをPで割ることで、下記の式が得られます。∆PP≃1P dPdr∆r+12 1P d2Pdr2(∆r)2=-D∆r+12C(∆r)2ここでDがデュレーション、Cがコンベクシティに相当します。テイラー展開では3次項以降についても記載できますが、金利変化の3乗になると極めて小さくなるため、通常の固定利付債については3次以上の項目についてさほど気にすることがないとも言えます。実際、実務では債券の実務で3次項を考慮することはほとんどありません。また、テイラー展開は金利rの周りで近似しているわけですので、大きな金利変化が起こった時はそもそも粗い近似になりえる点にも注意が必要です*8。固定利付債のケース(10年国債)ここで、服部(2020c)のBOX2と同様、10年国債を事例にコンベクシティを考えてみます(実際のクーポンは年2回支払いですが簡略化しています*9)。まず下記の通り、10年国債の価格が各キャッシュ・フローの割引現在価値で決まるとします。P=c(1+r)+c(1+r)2+…+c+100(1+r)10*8) クルーイ・マーク・ガライ(2015)では「コンベクシティを調整した債券価値は、(省略)利回りに大きな変化があった場合の近似にすぎない」(p.181)と注意を促しています。*9) タックマン(2012)では年2回の利払いで定式化しているため、厳密な説明を知りたい方は同書を参照してください。また、ここではわかりやすさを重視するため10年債の事例を取り上げていますが、タックマンではT年債という一般的な形でデュレーションとコンベクシティを定義しています。デュレーションは上記を金利で微分して価格で割ったものであり、下記のようになります。D=-1P ∂P∂r=1(1+r) 1P[1×c(1+r)+2×c(1+r)2+…+10×c+100(1+r)10]服部(2020a)で指摘したとおり、上記からデュレーションは平均回収期間と解釈できますが、上記の式は期間を金利で割り引いた形になっているため、金利が上昇(下落)すると、平均回収期間が短く(長く)なります。デュレーションが金利水準に依存する理由は、金利が高い(低い)場合、平均回収期間を強く(弱く)割り引くため、平均回収期間が短く(長く)なるからです。コンベクシティは金利が変化した際のデュレーションの変化分ですから、上記について更に金利で微分することにより、下記の式が導出できます。C=1P ∂2P∂r2=1(1+r)2 1P[1×2×c(1+r)+2×3×c(1+r)2+…+10×11×c+100(1+r)10]これをみると、各キャッシュ・フローの現在価値に年限の積がウェイトとしてかかっていることがわかります。例えば、10×11×c+100(1+r)10は満期のキャッシュ・フローの現在価値に10年と11年の積がウェイトとしてかかっています。こうしてみると、年限のいわば二乗がウェイトとしてかかるため、国債の年限が長くなるほど、二次関数的にコンベクシティが大きくなることがわかります。割引債の場合、期中のクーポンがないため、c=0となります。また、そもそも割引債の価格は満期で100円になる債券をrで割り引いた値になるため、P=100(1+r)10となることを利用すると、上式から10年の割引債のコンベクシティは下記のように記載できます。C=10×11(1+r)2 ファイナンス 2020 Dec.73シリーズ 日本経済を考える 107連載日本経済を 考える

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