ファイナンス 2020年12月号 No.661
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ティ(C)になります*6。C≡1P d2Pdr2(1)また、テイラー展開を用いれば、金利が変化した場合の国債の価格の変化について、デュレーションだけでなくコンベクシティまで考慮した場合、下記の式が成立します(この式も債券のテキストに必ず記載がある関係式ですが、数式を使った導出は4節を参照してください)。∆PP=-D∆r+12C(∆r)2(2)3.2 日本国債の有するコンベクシティの値図4は2年から40年国債のコンベクシティのデュレーションとコンベクシティの値を示しています。デュレーションは年限が長くなるに比例して大きくなっていきますが、コンベクシティも長い国債ほど大きいことが確認できます。服部(2020c)で強調したように国債のデュレーションはおおよそ年限(平均回収期間)というイメージでよいですが、コンベクシティについては平均回収期間の二乗というイメージになり、コンベクシティは長くなればなるほど二次関数的に増大しています(図4で概ねそうなっていることをご確認ください。国債のコンベクシティは平均回収期間のおおよそ二乗になる理由は4節で議論します)。図4 日本国債のデュレーションとコンベクシティ2年5年10年20年30年40年デュレーション1.954.839.7919.0427.2535.67コンベクシティ4.625.4100.3380.0798.11377.5注:これは2020年9月のカレント銘柄についてBloombergの算出値を参照しています。コンベクシティの値はBloombergにおける金利変化が%表示になっていることを調整するため、Bloombergの値を100倍した値になっています。この詳細は4節を参照してください。図4の数字を使って、30年の日本国債について1%の金利上昇があった場合、コンベクシティが国債の価格低下にどのような影響を与えるかを考えてみましょう。仮にデュレーションだけを考えることにすると、デュレーションが27.25ですから、1%の金利上昇により27.25%の価格低下となります。一方、コンベク*6) 服部(2020)ではDV01やベーシス・ポイント・バリューをデルタと呼ぶと説明しましたが、オプションでは、デルタの変化率をガンマと呼びます。オプションの価値をV、原資産の価格をPとするとガンマはγ=∂2V∂P2と定義されます。ここではコンベクシティは債券価格に対する金利の2階微分 と説明していますが、金利を債券のデリバティブだと解釈すれば、コンベクシティはガンマそのものであることが理解できます。シティまで加味すると、デュレーションが27.25、コンベクシティが798.1ですから、式(2)を用いれば、∆P/P=-27.75∆r+798.12(∆r)2になります。∆rが金利上昇部分ですが、例えば、1%の金利変化であった場合、-27.75×1%+798.12(1%)2=-23.76%となり、コンベクシティがあることにより、価格の下落が小さくなることがわかります。3.3  コンベクシティ活用の場面:生命保険会社の事例服部(2020c)のBOX 1で説明したとおり、生命保険会社が資産側と負債側のデュレーションをマッチさせるという形でAsset Liability Management(ALM)を行っています。実際、生命保険会社はALMの観点から資産サイドのデュレーションを伸ばしてきましたが、これは具体的には30年や40年国債など年限の長い国債の購入を積極化させることでリスク管理を行ってきたわけです。もっとも、資産と負債の金利リスクをマッチさせるという意味でいえば、ALMではデュレーションだけでなく、コンベクシティもマッチさせた方がより望ましいリスク管理といえます。事実、タックマン(2012)でも、「金利変動の影響を抑えようとする場合、デュレーション単体よりも、デュレーションとコンベクシティの両方を利用したほうが高いヘッジ効果を得られるということである」(p.113)と指摘しています。生命保険会社が販売する商品には、例えば、終身保険のように非常に年限の長い契約もあります。実際、年限の長い終身保険のコンベクシティは、実務家の試算によっては2,000を超えるようなケースもあります(終身保険のコンベクシティが債券より長くなる可能性については4.3節を参照してください)。したがって、終身保険など年限の長い商品を提供している生命保険会社はコンベクシティの大きな負債を有していると解釈できます。服部(2020c)で指摘したとおり、生命保険会社はデュレーションのミスマッチがあり、時間をかけてマッチングを進めていたわけですが、実はコンベクシティという観点でもミスマッチがあった ファイナンス 2020 Dec.71シリーズ 日本経済を考える 107連載日本経済を 考える

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